Social Impact Act

2020年1月14日

【第一弾】TCFDは企業担当者はどのように対応すればいいのか?

最終更新: 2020年10月16日

TCFDとは?

TCFDとは、2016年に金融安定理事会(FSB)によって設立された「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(The FSB Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のことです。
 

 
昨今、日本においても、こちらのTCFDへ賛同する企業が増えてきています。
 

 
そこで今回は、TCFDについて具体的に企業担当者はどのように対応していくべきないのか、そちらの基本的な部分について紹介します。

具体的にやるべきこと

【ターゲットについて】
 
情報開示の文脈でいうと、まず、情報開示ではそのターゲットがいます。
 
TCFDの場合は投資家になります。
 

 
TCFDは投資家に適切な投資判断を促すための一貫性、比較可能性、信頼性、明確性をもつ、効率的な気候関連財務情報開示を企業へ促すことを目的としているためです。
 

 
【情報開示媒体】
 
一般的な年次財務報告等に盛り込むことが通常ですが、こちらも規制ではないので、WEB等での情報発信においてそのエッセンスを盛り込む企業が増えてきています。
 

 
【具体的なアクション】
 
TCFDは、全ての企業に対し、①2℃目標等の気候シナリオを用いて、②自社の気候関連リスク・機会を評価し、③経営戦略・リスク管理へ反映、④その財務上の影響を把握、開示することを求めています。


 


 

 
具体的には、まずは、下記について、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」定め、公開することが推奨されています。
 

 
■ガバナンス
 
リスクと機会に対する取締役会の監督体制
 
・取締役会には、どのようなプロセスや頻度で気候関連の課題が報告されているか?
 
・取締役会は、経営戦略、経営計画、年間予算、収益目標、主要投資計画、企業買収、事業中止等の意思決定時に気候関連の課題を考慮しているか?
 
・取締役会は、気候関連の課題への取り組みのゴールや目標に対してどのように モニターし監督しているか?
 

 
リスクと機会を評価・管理する上での経営者の役割
 
・気候関連の担当役員や委員会等が設置されているか?
 
・設置されている場合の責任範囲や取締役会への状況報告
 
・気候課題に関連する組織構造
 
・経営者が気候関連課題の情報を受ける手順
 
・経営者がどのように気候関連課題をモニターしているか?
 

 
→ どのような体制で検討し、それを企業経営に反映しているか。


 
■戦略
 
短期・中期・長期のリスクと機会
 
・短期・中期・長期において関連があると考える側面
 
・各期間において、重大な財務影響を及ぼす具体的な気候関連の課題
 
・重大な財務影響を及ぼすリスクや機会を特定するプロセス
 

 
事業・戦略・財務に及ぼす影響
 
・特定した気候関連課題が事業・戦略・財務に与える影響
 
・製品・サービス、サプライチェーン・バリューチェーン、緩和策・適応策、研究開発 投資、事業オペレーションの各分野における事業・戦略への影響
 
・営業収益・費用、設備投資、買収/売却、資金調達の各分野における気候関連 課題の影響
 

 
2℃目標等の気候シナリオを考慮した組織戦略の強靭性
 
・気候関連リスクと機会に対する戦略の強靭性
 
・リスクと機会が戦略に与える影響、リスクと機会に対処する上での戦略変更、気候関連シナリオ・時間軸
 

 
→ 短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか。またそれについてどう考えたか。

■リスク管理
 
リスク識別・評価のプロセス
 
・リスク管理プロセスや気候関連リスク評価の状況(特に、他のリスクと比較した気候関連リスクの相対的重要性)
 
・気候変動に関連した規制要件の現状と見通し
 
・気候関連リスクの大きさ・スコープを評価するプロセス、リスク関連の専門用語・既存のリスク枠組みリスク管理のプロセス気候関連
 

 
リスクの管理プロセス
 
(特に、気候関連リスクをどのように緩和・移転・受容・管理するか)
 
・気候関連リスクの優先順位付け(どのように重要性の決定を行ったか)
 

 
組織全体のリスク管理への統合状況
 
・組織全体のリスク管理の中に、気候関連リスクの識別・評価・管理プロセスがどのように統合されているか
 

 
→気候変動のリスクについて、どのように特定、評価し、またそれを低減しようとしているか。
 

 

■指標と目標
 
組織が戦略・リスク管理に則して用いる指標
 
・気候関連リスクと機会を測定・管理するために用いる指標(水・エネルギー・土地 利用・廃棄物管理の側面も検討)
 
・報酬方針への指標の統合状況(気候課題が重大な場合)
 
・内部の炭素価格の情報や、低炭素経済向けの製品・サービス由来の収入に関す る指標 指標は経年変化がわかるようにし、計算方法等も含める
 

 
GHG排出量(Scope 1、2、3)
 
・組織・国を超え比較するためGHGプロトコルに従い算出したGHG排出量
 
・GHG排出原単位に関する指標(必要な場合)
 
・GHG排出量等の経年変化を示し、計算方法等も含める
 

 
リスクと機会の管理上の目標と実績
 
・気候関連の目標(GHG排出、水・エネルギー利用等)
 
・製品・サービスのライフサイクルでの目標、財務目標等
 
・総量目標かどうか、目標期間、主要パフォーマンス指標等
 

 
→リスクと機会の評価について、どのような指標を用いて判断し、目標への進捗度を評価しているか。
 


 
また、TCFDには将来予測にたいしてシナリオプランニングの実施を推奨しています。
 
シナリオプランニングについては下記の記事なども参照ください。
 

 
シナリオプランニングとSDGsについて~持続的な世界にむけてヨハン・ロックストローム~
 

 
シナリオプランニングの特徴は、正確な世界を予測することではありません。
 
変化に対する対応力や強靭性をつけることが目的です。
 
シナリオの作成については、企業の中だけでなく、外部のコンサルなどを活用しワークショップ形式で開催するなども一案です。
 

 
別途、ブティックファームのKI Strategy Inc.でも支援していますので、関心をお持ちの方はお気軽にお問合せください。