シナリオプランニングとは?
昨今経営戦略の文脈において「シナリオプランニング」という手法をよく依頼されるようになりました。 「起こってもおかしくない未来」を俯瞰的に捉えることによって、「予想外のことが起こった」 際にも対処できるようにする、また適切な道筋を検討・判断する際の拠り所にするのが主な目的です。 もともとは軍事の世界において、「右の部屋に入るか?」「左の部屋に入るか?」で文字通り命懸けの世界において、複数のシナリオを用いて作戦を実行する際に、シナリオプランニングは活用されていました。 そうした手法をビジネスの世界にも活用できないか?という文脈で、バズワード的ではないなかでも、徐々に浸透してきた手法の一つです。
〈参考図書〉
「シナリオ・プランニング――未来を描き、創造する」
「最強のシナリオプランニング: 変化に対する感度と柔軟性を高める「未来の可視化」」
シナリオプランニングもツールですから、ピアノを上手く奏でられる人が一方で、弾けない人がいるように、使う人や組織によっては、意味のあるもの/ないものになりえますが、それはツールが悪いというわけでないです。
実際、石油会社ロイヤルダッチシェルなどの政治・経済変動のシナリオで大きく企業価値が変動しうる企業においては特に重宝されています。
SDGsとシナリオプランニング
昨今注目されるSDGsやパリ協定なども、シナリオプランニングなどの観点で読み解くことができます。 例えば、パリ協定では、産業革命以前と比較して気温上昇を2℃未満に抑えること、すべての国が排出削減目標を自主的に作成すること、新興国も含め途上国に温暖化対策に向けた資金援助を行うことなどが合意されました。 温暖化対策の重要性や対策は、0、1の話ではなく、グラデーションという意味を持ちます。つまりパリ協定を「2℃シナリオ」とするなら、3℃シナリオ、5℃シナリオ。逆に-3℃シナリオ、-5℃シナリオなどシナリオは考えられるのです。 もちろん主要シナリオは、決めても構わないわけですが、マイナスシナリオなどありえないなどと固定観念が強すぎる人にはシナリオプランニングには向いていないかもしれません。シナリオプランニングの重要性は、未来予測の精度を上げるためのものではありません。仮に〇〇がおこった際にどうするか?ということを予め合意を取っておくためのツールです。
社会の問題など複雑系の問題に対する、数理モデルの適用においては、従来様々な議論があります。それは、ミクロの素粒子物理学の世界においても、ノーベル賞を受賞した、 南部氏が提唱した「対称性の自発的破れ」にもみてとれます。つまり、人間世界のような膨大な複雑性の世界でなく、最小単位の 素粒子物理学の世界においても、対称性は自発的に破られるのだと。似たような事象として、例えば3000年前にタイムスリップし、全く同じ人間、世界、社会をなど再構築しても、現在に戻ってくると、確率的に0ではないまでも、ほぼ確実に同じ世界にはなっていないらしいということです。
ただ、マクロ経済学を応用し、複数のシナリオに基づく、政策提言なども行われており、 ヨハン・ロックストロームもその一人です。動画が公開されていますので、関心をお持ちの方は是非。
※TCFDやシナリオプランニングなどを検討されている方は、ブティックファームのKI Strategy Inc.でも支援を実施しています。お気軽にご連絡ください。
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