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サステナビリティー推進機能をどこに置くか|集約と分散の組織設計

専任部署を置くか、経営企画の中に持つか、事業部に分散させるか。サステナビリティー推進の組織設計には正解がなく、しかも自社の成熟度によって最適解が動きます。三つの類型それぞれの効きどころと壊れ方、そして移行の順序を整理します。

サステナビリティー推進機能の組織設計
FIG. 01 / サステナビリティー推進機能の組織設計PHOTOGRAPHY / ARCHIVE

サステナビリティーを本気でやる、と経営が決めた。次に来るのが「では、誰がやるのか」です。

この問いは、たいてい「専任部署を作るかどうか」に矮小化されます。ただ実際には、推進機能をどこに置くかで、その後の数年の動き方がかなり変わります。しかも自社の成熟度によって最適解が動くので、一度決めて終わりにもなりません。

ここでは、推進機能の置き方を三つの類型に分け、それぞれの効きどころと壊れ方を整理します。

類型①:専任部署に集約する

サステナビリティー推進室・サステナビリティー部を独立して置く形です。もっとも分かりやすく、外部からも見えやすい設計です。

効くのは、立ち上げ期です。開示対応、算定基盤の整備、フレームワークの読み解き。いずれも専門性が要り、片手間ではできません。誰かが専任で引き受けないと、そもそも前に進みません。

壊れ方は二つあります。

ひとつは、当事者意識の剥奪です。専任部署ができた瞬間、他部門にとってサステナビリティーは「あの部署の仕事」になります。以前は多少なりとも自分ごとだった論点が、専任者ができたことで他人ごとになる。専門部署の設置が、かえって全社の関与を減らすという逆説です。

もうひとつが、権限と責任の非対称です。推進室は横串の組織なので、多くの場合P/L責任を持ちません。責任は負うが権限はない状態で、事業部にお願いして回ることになります。この構造で個人がどう動くかは権限がないまま社内を動かすで扱いました。

類型②:経営企画の中に置く

独立部署にせず、経営企画部の一機能として持つ形です。

効くのは、中期経営計画との接続です。サステナビリティーの論点が予算と計画に乗るかどうかは、結局のところ中計の策定プロセスに入り込めるかで決まります。経営企画の中にあれば、この動線は最初から確保されています。移行計画の着手判断で経営企画を最初に握るべき理由(ネットゼロ移行計画に着手すべきか)も、同じ構造から来ています。

壊れ方は、優先順位の埋没です。経営企画は常に他の重要案件を抱えています。四半期の業績が厳しいとき、サステナビリティーの検討は自然に後回しになります。専任部署なら「それが仕事」なので残りますが、兼務だと消えます。

規模としては、まだ専任を置くほどではないが中計への反映は必要、という段階の企業に向いています。

類型③:事業部へ分散させる

本社に最小限の調整機能だけ残し、実行は各事業部が持つ形です。

効くのは、成熟期です。何をすべきかが社内で共有され、算定も開示も型ができた後は、実行を現場に持たせたほうが速い。事業部ごとに固有の論点(調達、製造、製品設計)があるので、そこに近い人が動くほうが的確です。

壊れ方は、標準の崩壊です。事業部ごとに算定方法が違う、開示の粒度が揃わない、目標の定義がずれる。これを防ぐには本社側に相応の調整機能が要るのですが、「分散させたから本社は小さくてよい」と考えると、後で収拾がつかなくなります。

事業部に持たせる際の設計は、サステナを自部門の話に変えるで扱った配賦とKPIの話が中核になります。責任だけ渡して評価指標を渡さないと、分散は機能しません。

順序としての現実解

三類型は、どれが正しいというより、成熟度に応じて移っていくものと捉えたほうが実務に合います。

立ち上げ期は集約です。専門性を一箇所に貯めないと、そもそも走り出せません。ここで分散させると、全員が少しずつ調べて誰も詳しくならない状態になります。

型ができたら、段階的に事業部へ渡していきます。ただし丸投げではなく、算定方法・目標の定義・報告の様式という「標準」を本社が持ち続けたうえで、実行を移す。

そして経営レベルの意思決定に接続する層として、取締役会・委員会があります。委員会が報告会で終わらないための設計はサステナビリティー委員会の実効性で、役員ポストとしてCSOを置くかどうかはCSO設置の判断軸で、それぞれ扱っています。

組織図より先に決めること

最後に、組織設計の議論をするときに先に握っておきたいことを挙げます。

この機能は何に責任を持つのか。開示書類を出すことなのか、排出量を減らすことなのか、事業機会を作ることなのか。この定義が曖昧なまま部署だけ作ると、担当者が何をもって評価されるのか分からなくなります。一人で担っている場合の持続可能性の問題は一人ESGを継続機能に変えるで扱いました。

どの意思決定に関与できるのか。設備投資の稟議に意見を出せるのか、調達先の選定に関与できるのか、事業計画の策定会議に呼ばれるのか。関与できる意思決定がゼロなら、その部署は報告書を作る係になります。

いつ見直すのか。三類型のどれを選んでも、2〜3年で前提は変わります。設置時に「◯年後に体制を見直す」と決めておくと、見直しが失敗の証明ではなく計画の一部になります。

組織構造は、売上と利益を最大化するために設計されてきました。そこにサステナビリティーという軸を足すとき、既存の構造に一つ部署を付け足すだけで済むのか、それとも構造そのものを問い直すのか。答えは企業によって違いますが、問いを立てないまま部署だけ作るのが、いちばん危ういとは言えると思います。


【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)では、サステナビリティー推進体制の設計と、事業部への展開設計を伴走支援しています(専門家プラットフォームSasla経由のご相談も可)。体制をどう組むかでお悩みの方は、現状の診断からお手伝いできます。

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KI STRATEGY / 編集部

KI Strategy 編集部所属。ESG・サステナビリティを軸に、開示と意思決定を貫くロジックを編む。

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