Social Impact Act

2017年4月20日

世界最大の機関投資家:GPIFがESG投資について解説会を開催

最終更新: 2020年8月6日

年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)とESG投資

2017年4月19日に「GRIスタンダード翻訳お披露目シンポジウム2017~サステナビリティと情報開示の可能性とその先へ~」が開催されました。

SIAでは、ESG投資やインパクト投資については、今までもいくどとなく紹介してきました。

ESG投資やインパクト投資の文脈において、世界最大の機関投資家である年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)の動向が注目される一方で、公の場でGPIFがESG投資の考え方などを説明することは非常に稀で、今回のシンポジウムも300人満員の状況となっていました。

まず、GPIFの基礎知識として、GPIF自身は「株式の売買および議決権行使は行わない」ということです。

これは、金融を専門としている人の中では広く知られていることですが、一般的にはあまり知られていない点かと思います。

GPIFの資金の株式売買等は、運用受託機関が実施しています。

そして、GPIFは運用受託機関を評価を行なっており、それらに基づいて、資金配分を決定しています。

(GPIFがESG投資に参画という報道の際に、GPIFが自身でESG関連銘柄の買い付けを行うというような一部誤解があったように見受けられましたが、買い付けは運用受託機関が実施しているということです。ただし、GPIFが最終的な運用受託機関の資金配分を決定する際にESGの観点を取り込んでいる為、間接的には、ESG関連の銘柄に、GPIFの意思とマネーが流れるというのは事実です)

国連責任投資原則(PRI)とESG投資

また、GPIFの運用受託機関の評価項目には国連責任投資原則(PRI)への著名の有無などもあります。

国連責任投資原則(PRI)

原則1:投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込みます

原則2:活動的な株式所有者になり、株式の所有方針と株式の所有習慣にESG問題を組み入れます

原則3:投資対象の主体に対してESGの課題についいて適切な開示を求めます

など

GPIFとしては「世界のESGの流量を日本に持ってき、日本をSDGs(持続可能な開発目標)大国にすることを全力で推進する」という話で締めくくられました。

ESG・SDGsマネーを企業が取り込むために

・GPIFとしては、運用受託機関のアセットマネージャーには、少なくとも、投資に際して、企業の統合レポート(名称は様々)は見るように伝えており、企業としては、SDGs(持続可能な開発目標)やESGの観点から適切なディスクロージャーが中長期的には求められるようになります。

(特に欧米系列の投資機関は性悪説に立つ場合が多く、公開されていない場合は、取り組みを行なっていないか、隠したい事実があると解釈されるのが一般的とされます)

・また、企業として、そうした観点が資金提供者側から見られていない場合や、報告書について、どんな項目を重視しているのかなどに対しても、資金提供者側から、明確な回答がない場合などは、GPIFに報告してもらいたいということです。

(これは外部からの第三者評価の一つの観点となるためとのこと)

・企業として、短期的な利益だけではなく、中長期的な成長やリスクマネジメントのために、いかに経営方針にSDGsや持続可能性の観点を組み入れるか、また、資金提供者側においても、レベルの向上が求められると話されていました。

(日本におけるESG関連の投資機関は、当事者が意識しているかは別として、「なんちゃってESG投資」というケースもあると、GPIFは認識しているとのこと)

今回は、ESG投資や責任投資などの文脈で登場する、GPIFについて紹介しました。引き続き、関連トピックについて紹介していきます。
 

 

 

 

 
関連情報として
 

 
世界最大の機関投資家と呼ばれる、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、グローバル環境株式指数の公募を開始しました。

応募の内容を下記となります。

① 気候変動などの環境問題はグローバルの課題であることを鑑み、同じコンセプトに基づいた、 (ⅰ)グローバル株式(除く日本)、(ⅱ)日本株式、それぞれを構成銘柄とした 2 つの指数を提 案すること。なお、比較分析のため、グローバル株式(含む日本)を構成銘柄とした指数も あわせて提出いただくことが望ましい。

② 特定の業種・業態の企業を一律に除外する(いわゆるネガティブ・スクリーニング)の手 法によらず、環境の課題解決を後押しするコンセプトに基づく指数であること

③ 時価総額加重指数(親指数)と同程度のリターンが期待され、長期的にはリスク調整後のリ ターンの改善が期待される指数であり、かつ過去のパフォーマンスやバックテストの結果 が概ねそれを裏付けるものであること

④ 環境を中心に ESG 要素のみに基づいて、銘柄選定を行うこと

⑤ 評価手法の客観性、中立性、透明性が高い指数であること

⑥ パッシブ運用に必要な指数データが適切に開示されること

⑦ 特定の銘柄、スタイル等への過度な偏りがないこと

⑧ 相当程度の投資が可能なキャパシティを持つこと

今年度の7月に、GPIFは、日本株のESG投資インデックスについて「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「FTSE Blossom Japan Index」「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」を選定したと発表されましたが、ESGの「E(環境)」については、採用を見送っていました。

年金基金のような、大手中長期投資機関のアセットオーナーがESG投資に本腰を入れることで、今後国内におけるESG投資などサステナブル投資の流れが強まることが期待されます。


 
また証券業界の動向もあります。
 

平成 29 年10 月10 日に第1回「証券業界におけるSDGsの推進に関する懇談会」が開催されました。

懇談会委員メンバーはこちらとなります。

以前より、鈴木日証協会長直轄の諮問機関として、SDGs諮問機関を設置するという報道があり、SDGsに関して証券業会の動きは注目されていました。

日本証券業協会〜持続可能な開発SDGsへ諮問機関を設置〜

第1回の資料はこちらに公開されています。ご関心をお持ちの方は、ご参照ください。

既存の取り組みは大きく、三分類で整理しています。

1. 貧困、飢餓をなくし地球環境を守る取組み

インパクト・インベストメント(ワクチン 債、ウォーターボンド、グリーンボン ド等の組成・販売など) ESG投資などが対応

2.働き方改革そして 女性活躍支援を図る取組み

ワーク・ライフ・バランス推進策の導入などが対応

3.社会的弱者への教育支援に関する取組み

CSR活動などが対応

デンマークなどでは、政府が10億㌦規模の「SDGs投資ファンド」を立ち上げなどを計画していると一部報道があり、日本においてもその動向が注目されます。今後の金融業界の動きは継続的にモニタリングしていきます。

また、働き方改革などについて、昨今の年金基金(GPIF)のESGインデックスにおいても女性の活躍に関係するインデックス(MSCI 日本株女性活躍指数(愛称WIN))が採用されるなど、今後も金融セクターからも推進を後押しするする動きが活発化されるのではないかと予想されます。

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