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CGコード2021年改訂の5年後|サステナ要請はどこまで実装されたか

2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂で、サステナビリティーは初めて取締役会の議題として明記されました。あれから5年。委員会もTCFD開示も普及した一方、形だけ整えて中身が伴わない企業も残ります。何が実装され、何が形骸化したのかを整理します。

CGコード改訂とサステナビリティー
FIG. 01 / CGコード改訂とサステナビリティーPHOTOGRAPHY / ARCHIVE

この記事は、2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂を控えた時期に、金融庁の公表資料からサステナビリティー関連の論点を抜き書きしたものでした。

改訂は同年6月11日に施行されています(金融庁)。あれから5年が経ち、当時「これから求められること」だった項目の多くは、すでに実務の前提になりました。そして一部は、形だけ整って中身が伴わないまま残っています。

2026年に予定される次の改訂を前に、2021年の要請が現場で何を生み、何を生まなかったのかを整理し直します。

2021年改訂が求めた三つのこと

サステナビリティーに関して、改訂が求めたのは大きく三点でした。

第一に、取締役会が基本方針を策定すること。サステナビリティーを巡る取組みについて、中長期的な企業価値向上の観点から、取締役会が方針を決める。それまで「CSR部門の仕事」だったものが、取締役会のアジェンダとして名指しされたのが、この改訂の本質的な転換点です。

第二に、開示すること。とりわけプライム市場上場会社には、TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく気候関連開示の質と量の充実が求められました。

第三に、中核人材の多様性を確保すること。管理職層におけるジェンダー・国際性・職歴・年齢等の多様性と、その測定可能な目標・状況の開示です。

改訂の際立った特徴は、サステナビリティーを「リスク」だけでなく「収益機会」としても捉えるよう明記した点にありました。守りの論点から、戦略の論点へ。文言としては、ここが最も大きな変化でした。

実装されたこと

5年を経て、形として定着したものがあります。

サステナビリティー委員会の設置は、上場企業を中心に一気に広がりました。取締役会が基本方針を策定するという要請に対し、その検討の場として任意の諮問機関を置く、という応答です。

TCFD整合の気候開示も普及しました。ただしTCFD自体は2023年10月に役割を終え、枠組みはIFRS S1/S2とSSBJへ引き継がれています。この移行の全体像はTCFDから卒業しIFRS S2/SSBJへで整理しました。CGコードが求めた開示は、いまや任意の枠組みではなく、有価証券報告書での法定開示へ接続していく流れの中にあります(SSBJはいつから義務化か)。

スキルマトリックスの開示も、プライム市場では標準になりました。取締役の知識・経験・能力を一覧化する表です。

つまり、「箱」は揃ったと言えます。

形骸化したこと

一方で、箱が中身を保証しないことも、この5年ではっきりしました。

委員会については、四半期に一度開いてはいるが議論が事務報告で終わっている、社外取締役の質問に対する回答が表層的になる、経営会議や取締役会への接続が弱く議論が委員会内で完結する――こうした声を、ご支援先でよく伺います。実効性の見分け方はサステナビリティー委員会の実効性で扱いました。

スキルマトリックスも同様です。サステナビリティーの欄に取締役全員の丸が並んでいる表を、しばしば見かけます。全員が該当するなら、その項目は識別に役立っていません。この分解の仕方は取締役会スキルマトリックスの作り方で別途整理しています。

気候開示も、シナリオ分析が1.5℃と4℃の表を2枚並べて終わる形に収れんしがちです(気候シナリオ分析をどこまでやるか)。

共通しているのは、要請された形式は満たしているが、経営判断が変わっていないという点です。

なぜ形骸化するのか

この5年を振り返って思うのは、形骸化が担当者の怠慢によるものではない、ということです。構造に理由があります。

CGコードはコンプライ・オア・エクスプレイン(実施するか、しない理由を説明するか)の枠組みです。つまり、実施したことを示す最も安全な方法は、実施した形跡を残すことになります。委員会を設置した、方針を策定した、表を開示した。これらは客観的に示せます。

一方、「その議論で経営判断が変わったか」は、示すのが難しい。示せないものより示せるものに労力が向かうのは、組織として自然な反応です。

だから、形骸化を個人の意識の問題として扱っても解決しません。効くのは、議論の中身が後段の意思決定に接続されているかを、運用として点検する仕組みのほうです。

2026年改訂を前に

コーポレートガバナンス・コードは、2026年中の再改訂が見込まれています。サステナビリティーの位置づけが引き上げられる方向で議論が進んでおり、改訂内容の見通しはCGコード2026改訂と稼ぐガバナンスで扱います。

その前に、担当者の方に一度やっていただきたいのが、2021年改訂への自社の対応を棚卸しすることです。

  • 設置した委員会の議論は、過去1年で経営判断を一つでも動かしたか
  • スキルマトリックスのサステナビリティー欄は、取締役の識別に役立っているか
  • 気候開示は、投資家との対話で実際に参照されているか
  • 中核人材の多様性目標は、人事の実務に接続されているか

ここで「否」が並ぶなら、次の改訂で項目が増えても、増えた分だけ形式が積み上がるだけです。逆に、2021年分の中身を固められていれば、2026年の追加要請は既存の運用に乗せるだけで済みます。

新しい改訂が来るたびに新しい箱を作るのか、すでにある箱の中身を詰めるのか。5年前のこの記事を書き直しながら、その差が効いてくるのはこれからだと感じています。


【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)では、CGコード対応の棚卸しと、サステナビリティー委員会・取締役会の実効性向上の伴走支援を実施しています(専門家プラットフォームSasla経由のご相談も可)。形は整ったが中身が動いていないと感じておられる方は、現状の診断からお手伝いできます。

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KI STRATEGY / 編集部

KI Strategy 編集部所属。ESG・サステナビリティを軸に、開示と意思決定を貫くロジックを編む。

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