CDP(旧 Carbon Disclosure Project)は、2000年に英国で設立された世界最大の環境開示プラットフォーム。気候変動・水セキュリティ・フォレストの3領域(2024年からプラスチック・生物多様性を追加)でA-D-スコアを付与し、運用資産142兆ドルの機関投資家が参照する。2024年にIFRS S2と整合化、A List 2025は877社(前年比70%増)。質問票C0-C12構造と日本企業の対応実情を整理する。
CDP(旧 Carbon Disclosure Project)は、2000 年に英国で設立された世界最大の環境開示プラットフォームである。気候変動・水セキュリティ・フォレストの 3 領域(2024 年からプラスチック・生物多様性を追加)で、企業のサステナビリティパフォーマンスを A〜D- でスコアリングし、運用資産 142 兆ドルを擁する 700 を超える機関投資家がそのデータを参照する。本記事では、CDP の概要、スコアリングの仕組み、質問票 C0〜C12 の構造、2024 年の IFRS S2 整合化、A List 2025(877 社、前年比 70% 増)、日本企業の対応実情までを整理する。
CDP(読み:シーディーピー)は、機関投資家を主たる需要家とする環境情報開示プラットフォーム。略称は「Carbon Disclosure Project」だったが、活動範囲が水・森林・プラスチックなどに拡大したため、2013 年に正式名称を単に「CDP」とした。
CDP は段階的にテーマを拡張してきた。
| 領域 | 開始 | 2025 年スコアリング |
|---|---|---|
| 気候変動(Climate Change) | 2002 年 | A 〜 D-(毎年) |
| 水セキュリティ(Water Security) | 2010 年 | A 〜 D-(毎年) |
| フォレスト(Forests) | 2013 年 | A 〜 D-(毎年) |
| プラスチック(Plastics) | 2024 年追加 | 未スコア(情報収集段階) |
| 生物多様性(Biodiversity) | 2024 年追加 | 未スコア(情報収集段階) |
特にフォレストは、TNFD(自然関連財務情報開示)と同じ自然資本領域に位置づけられ、近年重要性が急速に増している。プラスチック・生物多様性は 2024 年から情報収集が始まり、将来的にはスコアリング対象となる見込み。
CDP のスコアリングは 4 段階・8 区分。気候変動の例:
| スコア | 意味 |
|---|---|
| Leadership: A / A- | リーダーシップレベル:ベストプラクティス、戦略的取組 |
| Management: B / B- | マネジメントレベル:体系的取組、目標設定済 |
| Awareness: C / C- | 認識レベル:環境課題を理解、データ収集開始 |
| Disclosure: D / D- | 開示レベル:質問への回答はあるが、行動は限定的 |
| F | 未回答 |
A スコア取得には、Scope1+2 と Scope3 の開示、Science Based Targets の設定、第三者検証、TCFD ガバナンス、サプライヤー・エンゲージメント等の高度な実装が要求される。
CDP の質問票は、論点別に C0〜C12 のセクションに分かれている。
| セクション | テーマ |
|---|---|
| C0 基本情報 | 企業概要、報告年、バウンダリ設定 |
| C1 ガバナンス | 取締役会レベルの気候課題オーバーサイト、CEO のコミットメント |
| C2 リスクと機会 | 物理的リスク・移行リスク、ビジネス機会の特定と財務影響評価 |
| C3 事業戦略 | 戦略・財務計画への気候課題の組込み、シナリオ分析、移行計画 |
| C4 目標と実績 | 削減目標(SBT 整合性)、達成実績、ネットゼロコミットメント |
| C5 排出量算定方法 | GHG プロトコル準拠、算定境界、組織境界の定義 |
| C6 GHG 排出量 | Scope1 / Scope2 / Scope3 の総排出量 |
| C7 排出量詳細 | 国・ガス種・部門・拠点別等での詳細分類 |
| C8 エネルギー | エネルギー消費、低炭素エネルギー比率 |
| C9 追加指標 | 部門別生産量、関連 KPI |
| C10 第三者検証 | Scope1/2/3 等の第三者検証ステータス |
| C11 カーボンプライシング | 内部カーボンプライシング、炭素税対応 |
| C12 エンゲージメント | サプライヤー、顧客、その他へのエンゲージメント活動 |
設問数は気候変動だけで 200 問前後、回答工数は初回で数百時間、運用後でも年 100〜200 時間規模となる。
CDP の大きな転換点が、2024 年から IFRS S2(ISSB の気候関連開示基準)と整合化したことである。
CDP の分析では、回答企業の約 60% が IFRS S2 の主要設問に既に回答できる準備が整っているとされ、整合化のスムーズな移行が期待されている。
2025 年の CDP A List は 877 社で、前年比 70% 増という劇的な拡大を示した。背景:
グローバルで見ると、Microsoft、L'Oréal、Unilever、Lenovo、Apple、ベルガラなどが Triple A 常連。日本企業からは富士フイルム、味の素、東急などが連続選出されている。
気候変動 A:100 社超、水 A:50 社超と、日本は CDP A 取得数で世界トップクラス。これは TCFD 開示義務化(東証プライム 2022 年〜)や SBT 認定企業の多さなど、日本企業のサステナビリティ実装が国際水準で進んでいることを示す。
CDP は他のサステナビリティ開示フレームワークと相互補完的に機能する。
| フレームワーク | 主たる役割 | CDP との関係 |
|---|---|---|
| CDP | 投資家向け環境データ収集・スコアリング | データプラットフォーム |
| IFRS S1/S2 | 投資家向け開示基準(ISSB が策定) | CDP 質問票が整合化(2024〜) |
| GRI | ステークホルダー全般向け開示 | GRI スタンダード記事参照 |
| TCFD | 気候関連財務情報開示 | 2023 年解散、IFRS S2 が継承 |
| SBTi | 科学的根拠に基づく削減目標 | CDP A 取得に SBT 設定が事実上必須 |
| PCAF | 金融機関の Scope3 カテゴリ15 | PCAF 記事参照 |
| EcoVadis | サプライヤー評価 | EcoVadis 記事参照 |
CDP は「開示プラットフォーム」、IFRS S2 は「開示基準」、SBTi は「目標設定基準」と、それぞれが異なるレイヤーで機能する。
支援先での経験から見える、日本企業の CDP 対応の実態を整理する。
CDP 対応を「年に 1 回の作業」と捉える企業と、「経営判断の道具」と捉える企業では、5 年後の競争優位が大きく変わる。
CDP は、規制対応の最低ラインを超えて、**「経営層が環境リスクと機会を体系的に把握するためのインフラ」**として活用できる枠組みである。SASB / TCFD / SBT / IFRS S2 の連携の中心に CDP が位置している。
CDP は、2000 年の創設から 25 年を経て、世界最大の環境開示プラットフォームとして機能している。2024 年の IFRS S2 整合化、A List 2025 の 70% 増、プラスチック・生物多様性領域への拡張など、進化のスピードが極めて速い。
日本企業にとっては、CDP A 取得は単なる開示の達成ではなく、**「サプライチェーン上の取引維持」「ESG 投資家からの評価」「ブランディング」**に直結する経営課題となっている。回答チームの体制構築、SBT 設定、Scope3 算定、サプライヤーエンゲージメントを統合的に進める必要がある。
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本記事は2026年5月時点の公開情報をもとに整理した。CDP の質問票・スコアリング基準は毎年改定されるため、最新情報は CDP 公式での確認を推奨する。
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