残り90%のためのデザインとは?
2007年にクーバーヒューイット国立デザイン博物館で開催された、世界各地のデザイナーが貧しい人々のニーズに応えるべく生まれたソリューションが展示されたもので、世界から注目を集めました。
前回に引く続き、途上国などをターゲットにしたデザインやプロジェクトを紹介した『世界を変えるデザイン2〜スラムに学ぶ生活空間のイノベーション〜』の内容を抜粋して紹介します。
デザインと都市の課題
・1950年に3億人だった都市地域の住民が、2030年までにグローバルサウスだけで30億人に増加、都市におけるスラムの増加も懸念される
・「空間的な貧困の罠」と呼ばれる現象があり、それは、「極めて限られた雇用」「性別格差」「劣悪な環境条件」「社会的排除と疎外」「社会的相互作用の欠如」「犯罪発生率の高さ」の課題が含まれている
・スラムに住む都市貧困層の状況を劇的に改善することができた事例としては、コロンビアのメデジンの事例がある。まずは、教育にフォーカスをあて、図書館の整備。孤立した地域をケーブルカーで結ぶ。また、危険地域の社会住宅の整備などを実施。
・環境、インフラ、テクノロジーのニーズが交差するところにまだデザインされていない部分があるのではないか
都市計画マニュアル
・都市計画マニュアルとは、ブエノスアイレス大学が作成した、スラム住民向けの投資計画実践ガイド
・都市計画マニュアルの作成では、シンプルなイラストなどを多様したもので、それは、想定利用者はスラム住民で、彼らの大半は長く複雑な文章を読むことに慣れていないため
・プロジェクトからの知見として、貧しい人々がもつ最大の問題の一つは、自身の前向きな未来を思い描けないこと、デザインはそうしたものを可視化する力も持つ
・都市デザイン参加プロセスの研修では、人々は「自分の地区にないもの」ではなく「あったらいいと思うもの」にフォーカスをあててエンパワーメントします。それは「貧しさ」を強調するのではなく、何かを望む権利があることを強調する
マニュアルはこちらから閲覧することができるようになっています。
今回は、残り90%のためのデザイン第二弾として、都市の課題と都市計画マニュアルの事例を紹介しました。
『世界を変えるデザイン2〜スラムに学ぶ生活空間のイノベーション〜』は、都市開発に限らず、途上国向けのプロジェクトを実施する際にインプリケーションが得られる内容となっています。
関心をお持ちの方は是非、手に取ってみてはいかがでしょうか?
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