Social Impact Act

2020年9月2日

【第五話】企業の取り組みの社会性の測定方法~With Without~

企業の社会的インパクト評価の第五弾です。
 
この連載を読むことで、企業の社会性評価の主な論点や、重要なポイントは大枠理解できるようになります。
 
もう少し(しばらく?)連載は続きそうですので、お付き合いください。
 

 
第四話までの内容を見ていない方は、是非、そちらもチェックしてみてくださいね。
 
【第一話】企業の社会的インパクトを如何に測定し公開していくべきか?
 
【第二話】社会的インパクト評価と実施するための重要概念
 
【第三話】社会的インパクト測定における対象範囲と波及効果の論点は?
 
【第四話】社会的インパクトマネジメントとリーンな評価
 

 
まず、第四回のポイントは下記です。
 
・インパクト評価をなぜ行うのか?という原点や目的意識をしっかりと認識することが重要
 
・インパクト評価のためのインパクト評価ではなく、目的意識にあったリーン(筋肉質)なインパクト評価が主流
 
・時系列を通じた波及効果を考慮するのであれば、インパクト評価の対象が、逓増していくものなのか?それとも、逓減していくモデルなのか?は、要確認

その上で、今回から、具体的な評価の手法についても、言及していきたいと思います。
 
まず、基本概念として、評価には、「Before After」と「With Without」という考え方があります。


 


 
これは、社会性の評価に閉じた話ではありませんが、Before Afterはイメージしやすいですよね。リフォームやお化粧などもそうかもしれませんが、施策の「前」と「後」で効果を測定するという方法です。

ただ、例えば、途上国の教育支援を考えた際に、ある教育サービスを実施する「前」と「後」で学力等の測定を実施しても、その教育サービスが本当に寄与しているかは、微妙な問題です。

たとえ、サービスを提供した後で、学力が上がったり、◯◯大学に合格者が出たのとしても、もしかすると、その地域の経済自体が上がっており、その事が、学力向上や◯◯大学への合格に寄与しているかもしれません。(当然その他の要因が働いているかもしれません)

その為、社会的インパクトを正確に測定しようとした場合は、With Withoutという考えに基づいて効果測定を実施する必要があります。

With Withoutは、Before Afterとは違い、ある教育サービスを享受する対象者と、教育サービスを享受しない対象者に分けて、実際に教育サービスが効果があるかを測定する方法です。

無作為に、ある教育サービスを享受する対象者と、教育サービスを享受しない対象者を抽出する事で、例えば先の例でいうと、たとえその地域の経済自体が上がっていたとしても、ある教育サービスを享受する対象者だけが効果が出ているのであれば、そこに一定の教育サービスの効果が認められるというものです。

インパクト評価の大切な論点として、そのアクションが生み出した効果と、他の多様な影響により生み出された効果をいかに切り分けることが出来るか?その点を十分に考慮する必要があるということです。

また、そうした際に、よく出てくる留意点のうち、まず、アトリビューションを紹介します。
 

 
アトリビューションは日本語でいうと、「寄与率」でしょうか。
 
生み出されたアウトカムのうち、その事業やプロジェクトの実施が寄与している割合を把握するということです。
 

 
繰り返しになりますが、貧困問題の解決を意図したアクションを考えてみましょう。
 
Before Afterの考え方だと、もしかしたら、その地域への経済援助など、自分たちの活動と関係のない取り組みにより、所得水準が上昇した可能性がありますよね(他の要因もあり得ます、例えば、政策が変わった、その地域で雇用が生み出されたなどなど)。
 

 
そのため、そうした際にはBefore Afterではなく、With Withoutの考え方に基づき、アクションを提供するグループと、そうでないグループでどの程度の、貧困問題の度合いに違いが生まれているかを観測していく必要があるということです。

インパクト評価のその他の主要な留意点となる、デット・ウェイトや、ドロップオフについては、次回以降に解説していきますね。

今回のポイントは以下です。
 
社会的インパクト評価には、「Before After」と「With Without」という考え方がある。
 
・社会的インパクトを正確に測定しようとした場合は、With Withoutという考えに基づいて効果測定を実施する必要がある。
 
アクションが生み出した効果と、他の多様な影響により生み出された効果をいかに切り分けることが出来るか?(アトリビューション(寄与率)を把握する必要がある)