INSIGHTS· SOCIAL IMPACT

【第三話】社会的インパクト測定における対象範囲と波及効果の論点は?

社会的インパクトを評価したり測定したりする際のポイントや論点について連載しています。今回は、社会的インパクト測定における対象範囲と波及効果について紹介します。どこまでの波及効果や時系列を想定するかを明確にすることが重要です。

第三話 社会的インパクト測定における対象範囲と波
FIG. 01 / 第三話 社会的インパクト測定における対象範囲と波PHOTOGRAPHY / ARCHIVE

社会的インパクト評価に関する連載の第三弾です。

この連載は、社会的インパクト評価そのものや、社会的インパクト評価という表現を使っていなくても、「CSR・サステナビリティー活動の評価」、「経済的評価だけでなく、新しい評価軸(非財務)を加えた事業評価」や、「経営計画や経営戦略におけるESGの統合」などに課題や関心を寄せている人向けの記事です。

関連領域を、KI Strategyでも数多く支援していますが、こうした領域の前提事項について、認知された上で、検討を進めることで、より効率的にプロジェクトを運営できるのではないかという期待も、連載には込めています。

前置きはこの程度にしまして、話は本題に戻りますが、もしも、第二話までを読んでいない方は、そちらも目を通しておいてください!

【第一話】企業の社会的インパクトを如何に測定し公開していくべきか?【第二話】社会的インパクト評価と実施するための重要概念

第二話で、重要なポイントとして上げたのが、下記です。 ・社会的課題の解決では、必ずしも、単純多数決が最適な制度設計とは言えない ・また、社会的インパクトの評価をする際には、「対象の人数(範囲)」ということ、同時に「その課題の深さ」も非常に重要になってくる

その上で、今回は、対象の人数について深ぼってみたいと思います。

これは、一件、理解しやすい概念だなと思うかもしれませんが、少し留意点や、よく検討に上がる論点がありますので、そちらを中心に。

それでは、早速、例えば、「マラリア対策の蚊帳」の社会的インパクト測定を考えてみましょう。マラリア対策の蚊帳における対象人数とはなんでしょうか?

まず、一番最初に思いつくのは蚊帳の購入者ですよね。 これでも立派に社会的インパクト評価を実施することが出来ますが、より厳密にということであれば、「波及効果」という概念が登場してきます。

この波及効果という概念が、社会的インパクト評価では度々登場してきます。(また波及効果こそ、複雑性の要因になっているという議論もありますが、それはおいおい)

蚊帳の場合であれば、当然、購入した人だけで使うのではなく、家族が使用したり、もしくは、その人が使っているのを見て、他の人も使ってみようかな?と考えるかもしれません。そうした効果も波及効果に該当します。

つまり社会的インパクトを測定する上で、重要な論点として、下記があるということです。

・**今回対象にしている社会的インパクト評価における波及効果の対象はどこまで含めるか?**ということです

もちろん、蚊帳などのプロダクトであれば、この地域の既婚率や、家族構成から波及効果を測定することもできそうですが、以下の例はどうでしょうか?

・SDGsの目標4番にも入っている、教育 ・長い期間活用される社会インフラや、美術・芸術品 など

例えば、教育の場合、教育を受けた人は、その内容などを子どもなどにある程度引き継いでいくことが可能かもしれませんし、もっと分かりやすい例ですと、長い期間活用される社会インフラは、もしかすると、今生きていない人も活用する可能性があるのです。

つまり**、波及効果を勘案しようとした場合、どの程度の時系列を想定するかが重要な論点になる**のです。

この波及効果の概念は、経済政策や効果などにも活用されています。産業関連表を聞いたことがあるでしょうか?こちらは、よくシンクタンクやメディアなどでも、経済効果◯◯億円!などにも使われたりする表です。

考え方は、一つの産業活動は、様々な産業や経済活動によって成り立ち、また影響を及ぼしているということです。一次産業で野菜の生産があるから、スーパーの利益にもなる訳ですし、電力供給があるからから、製造業が運営できるというものです。

それぞれの活動には、それぞれの係数をかけた波及効果が存在するというものです。

産業連関表は、1936年アメリカの経済学者W.W.レオンチェフ博士によって考案され、のちにノーベル経済学賞を受賞しましたが、社会的インパクトの測定についても、ある活動を実施した際には、様々な波及効果が存在する訳です。

先ほどの教育の例ですと、直接教育を受けた人だけでなく、その教育を受けた人の子どもなどにも活動の恩恵が広がりそうです。

また、インフラなどもも、自然災害などで老朽化したり、壊れてしまう可能性があるので、現在の評価ではないにしろ、将来世代までも一定のインパクトがあると考える方が合理的でしょう。

つまり、波及効果については、割引価値を考慮して、算出する必要があるということです。

少し難しくなってきてしまったでしょうか?

波及効果や割引価値については、次回以降も補足していきたいと思います!

一旦、今回の連載での重要なポイントは下記になります ・社会的インパクト評価を実施する際には、対象にしている社会的インパクト評価における波及効果の対象をどこまで含めるか?を明確にする ・また、波及効果を勘案しようとした場合、どの程度の時系列を想定するかが重要な論点になる ・そして、波及効果については、割引価値を考慮して、(係数をかけて)算出する必要がある

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