Social Impact Act
2020年10月16日
企業の社会的責任や、企業のサステナビリティーへの対応が、消費者からもサプライヤーからも求められる時代となってきました。
そうした中で、いかに社会的なインパクトを測定したり可視化していくべきか。
また、事業開発の一つの軸としても、経済的な価値と同様に、社会的価値を据える時代になってきています。
連載が続いています、社会的価値測定の第六弾です。
第5話までの内容を見ていない方は、是非、そちらもチェックしてみてくださいね。
・【第一話】企業の社会的インパクトを如何に測定し公開していくべきか?
・【第二話】社会的インパクト評価と実施するための重要概念
・【第三話】社会的インパクト測定における対象範囲と波及効果の論点は?
・【第四話】社会的インパクトマネジメントとリーンな評価
・【第五話】企業の取り組みの社会性の測定方法~With Without~
まず、第5回のポイントは下記でした。
・社会的インパクト評価には、「Before After」と「With Without」という考え方がある。
・社会的インパクトを正確に測定しようとした場合に、With Withoutという考えに基づいて効果測定が有効な場合がある
・また、アクションが生み出した効果と、他の多様な影響により生み出された効果をいかに切り分けることが出来るか?(アトリビューション(寄与率)を把握する必要がある)
今回は、アトリビューション以外の代表的な、留意点を紹介します。
一つ目がデッド・ウェイトと呼ばれるものです。
「生み出されたアウトカムのうち、事業やプロジェクを実施しなくても発生したと考えられるアウトカム」を適切に考慮するとういものです。
例えば、「就業率の改善」を目的にしたプロジェクトであれば、実施したプロジェクトで就業率が上がったのか?それとも、景気回復局面でのマクロ経済的な要因が寄与した結果なのかをしっかりと切り分ける必要があるという意味です。
もちろん厳密に、プロジェクトの成果による「就業率改善」なのか、景気回復による「就業率回復」なのかを切り分けることは難しいでしょう。
そうであったとしても、例えば、景気回復による、全体の有効求人倍率の改善などは差し引くなど、社会的成果の測定において、デッド・ウェイトを考慮していることを明確にすることだけでも、その測定の信頼性は増していきます。
次に、ドロップオフというものがあります。
「事業やプロジェクを実施することで生み出される、アウトカムが逓減していく割合」のことで、例えば、本田圭佑さんのセミナーに参加すると、サッカー少年はモチベーションが劇的に上がることでしょう。ただ、その効果は日に日に落ちていってしまうかもしれませんよね。
このように、研修効果やプロジェクトの成果などを考える際に、この効果はどの程度まで持続するものなのか?を考慮にいれてみることが求められます。
最後に、ディスプレースメントと、ディスカウント・レイトについてです。
ディスカウント・レイト(割引率)については、第三話でも若干紹介しましたが、今の一万円の価値は、将来の一万円の価値とは違いますよね(少なくとも利息が入るなど)。そうした部分を考慮に入れるという意図です。
そして、ディスプレースメントは、「事業やプロジェクを実施することで生み出される、ネガティブなアウトカムの割合」を指します。例えば、ある地区に街燈を設置することで、その地区の犯罪は低下したが、他の地区で増加したなどが該当します。
ただし、このディスプレースメントについては、どの範囲までを考慮するかにもよりますので、もしも、第四話でも紹介した、「リーンな評価」を目指すのであれば、影響の大きさを考慮した上で、その影響が少なそうでしたら、無視してもいいかもしれません。
トリビューション(寄与率)、デッド・ウェイト(死荷重)、ドロップ・オフ(逓減率)、ディスプレースメント(代替率)、ディスカウント・レイト(割引率)を紹介してきましたが、プロジェクトによって、どの事項が影響が大きそうかについては、見極めて適切に考慮のスコープから外すということも可能です。
ただ、そうした際も、考慮した上で、〇〇の理由で影響が少ないと判断したため、スコープから外したなどの説明があるだけでも、説得力は増してくるのではないかと思います。
もしも、現在、社会的価値の測定などを行われている場合にも是非、参考にしてみてくださいね。
今回のポイントは下記です。
・社会的インパクトの測定において、主要な考慮事項として、アトリビューションのほかに、デッド・ウェイト(死荷重)、ドロップ・オフ(逓減率)、ディスプレースメント(代替率)、ディスカウント・レイト(割引率)がある
・すべてを正確に測定するというよりは、少なくとも考慮にいれて、影響の多きな事項については、測定の方法を考える姿勢が求められる