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CSO(Chief Sustainability Officer)とは|4類型と日本企業での設置動向

CSO(Chief Sustainability Officer/最高サステナビリティ責任者)は、企業のサステナビリティ戦略を統括する経営幹部。米国では2025年に215人と約7倍に。external/people/strategy/business の4類型、CVO・CFOとの違い、SOMPO・レゾナックなど日本企業の設置実例、そして「設置して終わりにしない」実効性の条件まで整理する。

CSO Chief Sustainability Officer 4類型
FIG. 01 / CSO Chief Sustainability Officer 4類型PHOTOGRAPHY / ARCHIVE

CSO(Chief Sustainability Officer、最高サステナビリティ責任者)とは、企業のサステナビリティ戦略を統括し、ESG・気候変動・人権・サプライチェーンなど社会的・環境的な課題を経営アジェンダの中核に据える経営幹部のことである。米国上場企業で CSO の肩書を持つリーダーは 2021 年の約 95 人から 2025 年には 215 人へ増え、第1回調査(2011 年)の約 29 人から約 7 倍になった(Weinreb Group「2025 CSO Report」)。CSO は同時に、財務情報まで含めて統合的に価値を扱う CVO(Chief Value Officer) や、伝統的な CFO とも役割が重なる位置に立つ。ただし本稿で繰り返し強調するのは、**「肩書を置いたか」より「そのCSOに権限とレポートラインを与えたか」**という実効性の問題である。

CSO とは

CSO の英語表記は「Chief Sustainability Officer」が一般的だが、文脈によって「Chief Strategy Officer」を CSO と呼ぶこともあり、紛らわしい。本記事ではサステナビリティ責任者の意味で CSO を使う。

CSO の中核機能は次の通り。

  • 全社のサステナビリティ戦略の策定と、取締役会・経営会議へのオーナーシップ
  • ESG リスク・機会の特定と、財務報告・統合報告書への反映
  • TCFD、CSRD、ISSB、PRI、GRI など外部基準への対応
  • サプライチェーン上の人権・労働・環境課題のマネジメント
  • 投資家・顧客・規制当局・NGO 等のステークホルダー対話

伝統的な CSR 部門が「広報・社会貢献」の延長として位置づけられていたのに対し、CSO は事業戦略・財務・人事・調達のすべてに横串で関与する経営幹部級のロールである点が決定的に異なる。

CSO が必要になった構造的理由

CSO というポストが急速に普及した背景には、複数の構造変化がある。

  1. 規制圧力の急増:EU CSRD(2024 年から段階適用)、IFRS S1/S2(2024〜)、米国 SEC 気候開示ルール、日本のサステナビリティ開示義務化(2025 年〜SSBJ)など、サステナビリティ報告の規制化が一気に進んだ
  2. 投資家エンゲージメントの強化:PRI 署名機関 5,000 超、NZBA・NZAM など金融機関の脱炭素コミットメントが、企業側に Scope3 削減を含めた中長期目標の策定を要請するようになった
  3. サプライチェーン上の人権・気候デューデリジェンス義務化:ドイツ Supply Chain Due Diligence Act(2023 年〜)、EU CSDDD(2024 年合意)など、人権・環境 DD の法的義務化が広がった
  4. 顧客・採用市場での評価軸変化:Z 世代・ミレニアル世代がサステナビリティ実装の質で企業を選別する傾向が強くなった

これらの圧力が同時に押し寄せる中で、「取締役会と直結し、全社横断で意思決定できるサステナビリティ責任者」を置かないと対応できない、という構造的必然性が CSO 普及の根本にある。

Fortune 500 での設置動向

Fortune や PwC、Korn Ferry、Altrata などのリーダーシップ調査によれば、CSO の設置は近年急加速した。

  • 2011 年:米上場企業の CSO は約 29 人(Weinreb Group 第1回調査)
  • 2021 年:約 95 人(「10 年で 228% 増」と報じられたのはこの時点の値)
  • 2023 年:183 人 → 2025 年:215 人(2011 年比で約 7 倍)
  • 2025 年調査では CSO の **87% が「2 年前より規制・コンプライアンスに費やす時間が増えた」**と回答、60% が規制対応を最大の課題に挙げた
  • 役割の最大の変化は「規制要件(76%)」「サステナビリティ戦略と全社戦略の整合(44%)」「Scope3 への注力(39%)」

金融機関に絞った Deloitte と IIF の調査では、CSO を設置する金融機関は 2020 年の 15% から 2025 年に 45% へ増加し、その約 3 分の 1 が CEO に直接レポートしていた。設置率の上昇とともに、論点は「置くか否か」から「どこにレポートさせ、どんな権限を与えるか」へ移っている。一方、世界の大企業の半数以上は依然として CSO を置いておらず、業種・地域による差は大きい。

CSO の 4 類型 ── どこに重心を置くか

Fortune 2023 の調査では、CSO の重心の置き方によって 4 つのプロファイルに分類できると指摘されている。

類型重心典型的バックグラウンド
External(対外型)政府・規制当局・NGO との関係構築、政策渉外政府機関、シンクタンク、PR・コミュニケーション
People(人事型)人的資本、D&I、社会的インパクト、コミュニティHR、CSR、社会活動
Strategy(戦略型)サステナビリティを成長戦略・イノベーションの起点に経営企画、戦略コンサル、新規事業
Business(事業型)事業部の P&L 責任を持ち、事業を変革する事業部長経験、財務、M&A

理想的な CSO は 4 領域すべてに目配りするが、現実には個人の強みと組織の優先課題に応じて重心が決まる。日本企業では People 型と External 型が主流で、Strategy 型・Business 型は限定的というのが実感である。

CSO 設置による定量的成果

CSO ポストの設置が単なる飾りではなく、定量的な成果に繋がっていることを示すデータも蓄積している。

  • CSO がいる企業はネットゼロ目標達成が 3 年早い
  • CSO がいない企業の温室効果ガス排出は過去 1 年で +3%、CSO がいる企業は微減
  • ESG 評価機関の評価スコアも、CSO 設置企業のほうが構造的に高い

もちろん CSO だけで成果が出るわけではなく、取締役会の関与、CEO のコミットメント、CFO との連携、現場の実行体制などの総合力が鍵となる。それでも「CSO ポストの有無」が、企業の脱炭素・サステナビリティ進捗に統計的に有意な差を生んでいるという結論は、CSO 不在企業にとってシリアスな問いを投げかけている。

日本企業での導入実態 ── CSO/CSuO 設置の実例

日本では「CSO」という英語の肩書をそのまま掲げる企業はまだ少数で、CSuO(Chief Sustainability Officer の別表記)、サステナビリティ担当役員、ESG 部門統括、CSV 戦略担当など、呼称はばらついている。重要なのは肩書の文字面ではなく、どこにレポートし、どんな権限を持つかである。先進企業の設置形態を整理する。

企業肩書(呼称)時期特徴
SOMPO ホールディングスグループ CSuO2021 年 8 月新設サステナビリティの最上位責任者。推進協議会の議長を務め、マテリアリティ KPI を策定
レゾナック・ホールディングスCSuO2024 年 1 月新設最高戦略責任者(Chief Strategy Officer)傘下にあったサステナ機能を、社長直下の CXO へ格上げ
MS&AD インシュアランスグループ CSuO2021 年設置サステナビリティ委員会の運営責任者。KPI・方針を統括し取締役会に報告
味の素執行役 サステナビリティ担当──「CSO」を置かず、執行役+取締役会の諮問機関「サステナビリティ諮問会議」(社外有識者)で監督する設計
花王執行役員 ESG 部門統括──社長を議長とする ESG コミッティ下で ESG 戦略を統括
キリンホールディングスCSV 戦略担当 常務執行役員──CSO/CSuO ではなく「CSV(共有価値創造)」軸で組織化

ここから読み取れるのは、「肩書の有無」では実態を測れないということである。レゾナックのように同じ「CSO」という略称でも、最高戦略責任者(Chief Strategy Officer)の傘下に埋もれていたサステナ機能を社長直下へ格上げした例があり、肩書だけでは権限の所在は分からない。日本の制度面では、TCFD 開示義務化(2022 年 4 月)に続き SSBJ 基準が 2025 年 3 月に確定し、経済産業省の調査でもサステナビリティ委員会に相当する組織を設置する企業は約 6 割に達した。日本では「CSO 設置率」より「取締役会の監督機能をどう整えるか」が実務論点になっている。

CVO・CFO との違い、そして連携

サステナビリティ・統合報告に関わる経営幹部のロールが似た略称で並んでおり、混同しやすい。それぞれの位置づけを整理する。

役職主たる責任範囲焦点
CFO財務、IR、内部統制、資金調達株主価値、財務パフォーマンス
CSOサステナビリティ戦略、ESG、サプライチェーン、社会的インパクトステークホルダー価値、長期持続性
CVO財務とサステナビリティを統合した価値創造、統合報告6つの資本と長期価値

組織論として両立可能であり、実際の先進企業では「CFO + CSO + CVO 機能」を分業しつつ連携させる構造を取る。CFO と CSO が対立する組織では統合がうまく進まないので、両者を CEO 直下で並列に置き、CVO 機能(または兼任)で橋渡しする設計が現実解となる。

経済的利益と社会的利益の両立論

CSO というポストが議論される根本には、「経済的利益と社会的利益を本当に両立できるのか」という古典的な経営哲学の問いがある。

経済的利益の最大化に最適化された組織に、外圧で取って付けたような CSR 部門を設置しても、本質的には機能しない。ビル・ゲイツが Microsoft で利益最大化を追求した後に Bill & Melinda Gates Foundation という別組織で社会的利益を追求したように、組織の最適化目的が異なれば構造を分けるべきだ、という議論もある。

一方で、現代の規制環境・投資家圧力・人材市場・顧客要請の総合力は、「経済的利益のみを追求する組織はもはや成立しない」という方向に世界を押している。CSO の役割は、この緊張関係の中で、経済的利益と社会的利益の両立を事業設計のレベルから組み直すことにある。形式的に切り出された CSR 部門のような薄い活動ではなく、企業戦略・中期経営計画・ビジョン策定・ガバナンスの中核に組み込まれて初めて、CSO は意味を持つ。

設置して終わりにしないCSO ── 実効性を分ける4つの条件

CSO をめぐる議論で抜け落ちがちなのが、「設置しても機能しないCSO」の存在である。CSR 部門長を改名しただけでは、全社に横串は効かない。Deloitte/IIF や Weinreb のデータから、実効性のある(empowered な)CSO を分ける条件は次の4つに整理できる。

  1. CEO 直接レポート:CEO 直下に置かれた CSO は実効性が高い。だが金融機関でも CEO 直接レポートは約 3 分の 1 にとどまり、ここが最初の関門になる。
  2. 取締役会・委員会への直結:サステナビリティ委員会や諮問会議を通じて取締役会に直接報告できるか。味の素の諮問会議、MS&AD の委員会運営はこの設計の例。
  3. 財務・法務との連携:2025 年の調査では CSO の法務へのレポートが 2 年で 10%→21% へ倍増した。サステナビリティ開示が財務報告並みの統制を要するようになり、CSO は「旗振り役」から「統制機能」へと変質している。
  4. 財務連動・役員報酬連動の KPI:マテリアリティ KPI を役員報酬に連動させ、中期経営計画PBR1倍改善の文脈に組み込めているか。SOMPO のマテリアリティ KPI 策定はこの方向の一例。

逆に言えば、この4条件を満たさない「肩書だけの CSO」は、規制対応の負荷だけが集中して疲弊する。CSO 設置を検討する際の問いは、「置くか否か」ではなく「置いた CSO に予算・人事権・取締役会直結・報酬連動 KPI を与えられるか」である。

CSO の想定年収

参考までに、米国の Top Sustainability Officer(≒CSO)の年収は、平均約 21.7 万ドル、レンジで 18.3 万〜23.9 万ドル(Salary.com、2026 年時点)。ニューヨーク市では株式報酬込みで 22 万〜40 万ドルとの調査もある。日本では執行役員報酬の水準に準じるが、公開された一次データは限られる。2025 年の調査では、CSO 就任者の約半数がサステナビリティ職の経験者で、残り半分は異分野出身、11% は法務職出身だった。

よくある質問(FAQ)

Q. CSO と CSuO の違いは何ですか。 どちらも Chief Sustainability Officer の略・別表記で、実質的には同義です。ただし「CSO」は Chief Strategy Officer(最高戦略責任者)とも衝突するため、サステナビリティ責任者であることを明示する目的で CSuO を使う企業もあります。

Q. サステナビリティ担当役員と CSO は同じですか。 機能は近いものの、権限とレポートラインで差が出ます。執行役員がサステナを所管するだけの形と、CEO 直下で全社横断の意思決定権を持つ CSO とでは、実効性が異なります。

Q. 日本で CSO を置く企業は増えていますか。 肩書としての設置は SOMPO・レゾナックなど先進企業が中心ですが、サステナビリティ委員会の設置は約 6 割の企業に広がっています。日本では委員会による監督機能の整備が先行しています。

まとめ

CSO は、規制環境・投資家圧力・人材市場の複合的要請を背景に、過去10年で急速に経営幹部級ロールとして定着した。Fortune 500 ですでに95社、需要は228%増。日本でも先進企業で CSuO / サステナビリティ担当役員の形で導入が進む。

重要なのは、CSO ポストを置くことそのものではなく、「CEO 直下で全社横断の意思決定権を持つ責任者」が、サステナビリティを企業戦略と財務の中核に組み込めるかという構造の問題である。CFO・CSO・CVO の三位一体的な連携設計が、これからの経営の標準となる。

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本記事は2026年5月時点の公開情報、Fortune、PwC、Korn Ferry、Altrata 等の CSO 関連調査をもとに整理した。CSO ロールの設計・統計は急速に進化している領域なので、最新動向は各種調査で都度確認することを推奨する。

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KI STRATEGY / 編集部

KI Strategy 編集部所属。ESG・サステナビリティを軸に、開示と意思決定を貫くロジックを編む。

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