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CSDDD適用範囲外でも準備が要る理由|SIA

EU CSDDDは2024年7月発効、適用開始は2028〜2030年に段階的(Stop the clock指令で延期)。直接適用がない日本企業も、対象企業のチェーン・オブ・アクティビティ経由で要請を受けます。契約カスケード対応と「ある程度の準備」を、繊維関連企業の事例とともに見ていく。

CSDDD適用範囲外でも準備が要る理由|SIA
FIG. 01 / CSDDD適用範囲外でも準備が要る理由|SIAPHOTOGRAPHY / ARCHIVE

EUの企業サステナビリティー・デューデリジェンス指令(CSDDD:Corporate Sustainability Due Diligence Directive)が、2024年7月にEU公報掲載で発効しました。

その後、2025年4月17日に「Stop the Clock指令」が発効し、CSDDDの加盟国国内法化期限が2026年7月→2027年7月に1年延期、第一波(最大規模層)の適用開始も2027年7月→2028年7月に1年後ろ倒しされました。さらに、2025年12月のtrilogue(欧州議会・理事会・委員会の3者交渉)で実体的な簡素化を含むOmnibus Iパッケージが合意、2026年2月24日に理事会が最終承認しています。最終的な対象企業は従業員1,000人超かつ純売上4億5,000万ユーロ超を中心に、EU域外企業はEU域内売上が4億5,000万ユーロ超で適用対象となります(最終条文上の適用範囲・水準は、官報掲載版での確認が確実です)。

ご支援先からは、

  • 「うちはCSDDDの直接適用はないはず。でも、EUの取引先から人権DD・環境DDのアンケートが来始めた」
  • 「EU側の最終顧客から、調達先(うち)の情報を出すよう要請された」
  • 「対応しないと取引継続が危うくなりそうだが、何から手をつければいいか分からない」

というご相談が、ここ半年で急増しています。

「直接適用なし」でも避けられない理由

CSDDDは、対象企業に対して、「チェーン・オブ・アクティビティ」全体での人権・環境への悪影響の特定、防止、是正、報告を義務付けます。

「チェーン・オブ・アクティビティ」はCSDDDの独自用語で、上流の調達・製造に加え、下流は製品の流通・輸送・保管までに限定される点が特徴です(製品の使用・廃棄段階は含まれず、CSRDの「バリューチェーン」より範囲は狭い)。

つまり、対象企業のサプライヤーである日本企業は、対象企業から、

  • 人権・環境への悪影響に関する情報提供
  • 改善計画の提示
  • 場合によっては監査の受け入れ

を求められる立場になります。

これは、適用範囲外であっても、サプライチェーン経由で要請が降りてくる構造です。

業種別の影響度

CSDDDの影響を強く受けやすい日本企業の業種は、以下が代表的です。

  • 繊維・アパレル:原材料の調達地域での人権・環境リスク
  • 食品:原材料調達(パーム油、カカオ、コーヒー等)の児童労働リスク
  • 自動車・電機:サプライチェーン上の強制労働リスク、移民労働者の労働条件(紛争鉱物はCSDDDではなくEU紛争鉱物規則・米ドッド・フランクの文脈)
  • 建設・素材:水・土地利用変化、コミュニティへの影響

ご支援した売上1,500億円規模の繊維関連企業(中堅、欧州大手アパレルとの取引あり)では、2024年後半から欧州側顧客から人権DDの質問票(30〜40問規模)が頻繁に届くようになりました。そのうち1社からは、サプライヤーである一次原材料調達国での監査受け入れ要請も来ています。

つまり、自社が直接適用の対象でなくとも、業種・取引先構造によっては避けようがない要請がすでに来ている、ということです。だからこそ、「ある程度の準備」を社内で決めておく必要があります。

「ある程度の準備」を決めておく

直接適用がないことを理由に、何もしないのはリスクです。一方で、欧州大手と同じレベルの体制を作るのは、過剰投資になります。

担当者の方には、現実的な「ある程度の準備」を決めておくことをおすすめしています。

具体的には、

  • 自社のバリューチェーン上で、CSDDDの観点(人権、環境)でリスクが高い領域を1ページに整理
  • 主要なEU取引先からの要請書類を集めて、共通項を抽出
  • 欧州側顧客との対話チャネル(誰が、どの頻度で対応するか)を整備
  • 自社のサプライヤー側に対しても、最低限の人権・環境ポリシー要請を出す(CSDDD第8条が求める契約上の保証を介したサプライヤーへの遵守要求の連鎖、いわゆる「契約カスケード」を、自社のサプライヤーへ展開する)

これらは、欧州大手と同レベルの完全な体制ではなく、「合理的な範囲で対応している」という説明ができる準備、というイメージです。

Omnibusで適用範囲が緩和されても、なくならない流れ

2025年4月のStop the Clock指令、2025年12月のOmnibus I trilogue合意、2026年2月の理事会最終承認――これらにより、CSDDDの適用範囲縮小・時期延期は確定的に進みました。ただ、対象企業が確実に存在し、その企業のチェーン・オブ・アクティビティ上にいる以上、要請は来ます。Omnibus Iの内容は規制テキストの簡素化が中心で、サプライチェーンDDという概念そのものを否定したものではない、という読み解きが妥当です。

また、CSDDDが緩和されても、CSRD/ESRS、IFRS S1/S2、SSBJ、SBTi、CDP、UNGP(ビジネスと人権に関する指導原則)、OECD多国籍企業行動指針、ドイツのサプライチェーン法(LkSG、すでに施行中)、ノルウェーの透明性法、フランスの注意義務法、英国現代奴隷法、米国のUFLPA(ウイグル強制労働防止法)、日本の人権DDガイドライン――これらの個別法・ガイドラインから類似の情報要請が来るため、結局、人権・環境のサプライチェーンDDは、避けて通れない潮流です。

CSDDDだけを「対応する/しない」で考えるのではなく、人権・環境のサプライチェーンマネジメントを、自社のサステナビリティー戦略の一部として位置づけ直すこと。これが、振り回されないための、最も地味で本質的な打ち手だと思います。


【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)では、CSDDD対応とサプライチェーンDDの伴走支援を実施しています(専門家プラットフォームSasla経由のご相談も可)。EU取引先からの要請にどう対応すべきか悩まれている方は、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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