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ESG担当者が孤立しないための社内エンゲージメント戦略~なぜ他部門は動かないのか~

ESG・サステナビリティー推進担当者が社内で孤立する構造的な原因と、他部門を動かす「意味・意義・意図・意思」の翻訳フレーム。製造業1,000名規模のScope3事例から、形だけのマテリアリティから脱却して明日から手がつけられる打ち手を整理した。

ESG担当者が孤立しないための社内エンゲージメン
FIG. 01 / ESG担当者が孤立しないための社内エンゲージメンPHOTOGRAPHY / ARCHIVE

最近、ESG・サステナビリティーの推進担当者の方から、似たようなご相談を続けて伺いました。

・経営層は「重要だ」というが、予算は最後に削られる

・マテリアリティを更新したが、事業部側が動かない

・開示書類は年々厚くなる一方で、社内の誰が読んでいるのかも、よくわからない

これは個別企業の事情ではなく、推進担当者に共通する構造的な悩みです。

そもそも、なぜ他部門は動かないのか?

事業部や調達、人事のメンバーから見ると、ESGのアクションは自部門のKPIや業務とのつながりが見えにくいことが多いものです。

たとえば、ご支援した従業員1,000名規模のある製造業では、調達部に「Scope3削減に向けたサプライヤーアンケートの配布」を依頼したところ、現場の反応は「面倒な作業が増えるだけ」というものでした。

ところが同じ依頼を、「来期から、主要顧客との取引継続条件にカーボンフットプリント開示が含まれてくる」「サプライヤー側のデータを早めに把握しておくことは、結果的に調達部の交渉力にもつながる」という形で組み直しました。すると、調達部のキーパーソンの方が、自ら旗振り役を引き受けてくださったのです。

つまり、他部門が動かないのは、必ずしもサステナビリティーへの熱意の有無の問題ではなく、こちらからの「翻訳」が足りていない、ということもあるのではないでしょうか?

ここでいう「翻訳」とは、CO2削減トン数のような環境指標を、相手部門のKPI(コスト、顧客維持率、採用応募数など)に置き換えて伝える、という意味です。

「意味・意義・意図・意思」で社内を翻訳する

弊社では、事業や戦略の根っことして「意味・意義・意図・意思」という"意"のつくものが重要だと、繰り返しお伝えしています。

これは社内エンゲージメントにも同じように効きます。他部門に何かを依頼する前に、以下の四つを一度、言語化されてみてはいかがでしょうか。

・意味:このアクションは、相手部門にとってどんな意味があるのか?

・意義:なぜ、自社として今この取り組みなのか?(社会的意義だけでなく、経営的意義として)

・意図:1年後、どこに変化が生じていれば成功と言えるのか?

・意思:誰が、どこまでを継続的に担うか?担当者個人の意思から、組織の意思に移っているか?

もちろん、担当者の方の中には、開示資料の作成や評価機関の調査票への回答に追われて、こうした整理の時間そのものが取れていないというケースもあります。

ただ、形だけの開示や、なんちゃってマテリアリティで終わってしまうと、結局、社内も社外も誰の判断も変えない、残念な結果に行き着いてしまいます。

「形だけ」になりやすい施策

ご支援先で見かける、もったいないパターンとしては、

・サステナビリティー委員会を立ち上げ、半年に一度開催はされているが、議論が事務報告で終わっている

・役員報酬にESG連動KPIを入れたが、達成基準があいまいで、実質的なインセンティブになっていない

・eラーニングや全社研修を実施したが、終わった後の行動変容までは追えていない

など、いずれも仕組みとしては存在しているが、「なぜそれをやっているのか」「やった結果、何が変わるはずなのか」が組織内で共有されていない、というのが共通項です。

明日から手をつけられること

担当者の方が明日から手をつけやすいアクションをいくつか挙げてみます。

まず、既存のマテリアリティやKPIを、「相手部門の言葉」で1ページに翻訳し直してみる、という作業から始めるのがおすすめです。たとえば「気候関連リスクへの対応」という抽象的な表現を、調達部向けには「主要原材料の調達リスク低減施策」、人事部向けには「人材獲得競争上の差別化要素」と書き換える、といったレベルでも構いません。

そのうえで、他部門のキーパーソンの方と、30分でいいので「サステナビリティーの何が困っていますか?」「逆に、何があったら助かりますか?」というヒアリングの機会を取ってみてはいかがでしょうか。

そして何より、推進テーマごとに4つの「意」を1ページで言語化し、担当役員と握ること。この一手間が、後の半年の進み具合を大きく左右することになります。

「孤立しない仕組み」として効きやすいもの

ESG・サステナビリティーの推進は長距離走であり、担当者個人の熱意に頼った進め方をしていると、人事異動でリセットされたり、施策が継続しなかったりということが、よく見受けられます。

孤立しない仕組みとしては、たとえば以下のような要素が効きます。

・推進担当者と、各事業部のサステナビリティー推進アンバサダー(兼任で十分)との定期的な対話会

・連動KPIを各事業部のスコアカードに「項目として埋め込む」運用(数値目標は無理に持たせなくても、議論項目として残す)

・四半期に一度、現場の困りごとを役員会に1枚で上げる「翻訳レポート」の運用

・後継担当者の指名と、引き継ぎを前提とした業務の文書化

これらは派手さはないものの、推進が形骸化しないための、地味で本質的な打ち手だと思います。

ご参考まで――

弊社(株式会社KI Strategy)では、社内エンゲージメントの設計や、推進担当者の伴走支援を実施しております。サステナビリティー領域の専門家プラットフォームSasla(サスラ)経由でも、各分野の専門家への相談や定額制でのご相談が可能です。

社内で進めにくいなと感じていらっしゃる方は、お気軽にご連絡くださいませ。

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KI Strategy 編集部所属。ESG・サステナビリティを軸に、開示と意思決定を貫くロジックを編む。

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