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社会的インパクト投資は本当にインパクトを生むのか?

最終更新: 2019年7月3日


Stanford Social Innovation Review (SSIR) とは

スタンフォードソーシャルイノベーションレビューは、世界中の社会変革リーダーに対して、ウェビナー、会議、雑誌、オンライン記事、ポッドキャストなどを通じて、人権、インパクト投資、非営利団体のビジネスモデルなど、幅広いトピックに関する研究、理論、実践の情報を提供しています。

以下のyoutubeチャンネルなどにも動画を公開しています。


今回は、そんなSSIRに掲載された『When Can Impact Investing Create Real Impact?』という記事の紹介となります。

この記事は、投資が実際に社会的または環境的なの目標達成に貢献するかどうかを知りたいと考える投資家に向けられてたものとなっています。

詳細は原文にあたってください。

https://ssir.org/up_for_debate/article/impact_investing

社会的意図について

記事の紹介の前に、社会的インパクト投資とは、2010年のJ.P.モルガン、ロックフェラー財団、GIINの共同レポートの中では、下記とされています。

「インパクト投資とは、経済的利益を超えて、プラスのインパクトを創出することを目的としている投資である。(investments intended to create positive impact beyond financial return)」

(J.P. Morgan, the Rockefeller Foundation and the GIIN (2010,Nov))

インパクト投資は、(利潤最大化を目的とした)伝統的投資と(社会的インパクト最大化を目的とした)寄付の動機を一つにした新しいタイプの資本であると言われ注目を浴びています。

一番のポイントは、プラスのインパクトを創出することを目的(意図)としている投資が、プラスのインパクトを創出するのかということです。

金融市場の発展や、サブプライムローンなどの反省から、アダムスミスの神の見えざる手(invisible hand of market)に対して、神の見えざる心(invisible heart of market)と言われるこの領域ですが、古くから、市場の失敗(例えば、高度経済成長期の環境破壊)などに対して、どのような政策を行うべきかなどの、議論は広く経済学の分野で議論されてきた分野です。

ただ、意図や目的に注目した、投資活動に関する包括的な研究は比較的新しい領域の研究分野といえます。

投資において、経済的リターンと、社会的インパクトのどちらに重点を置くかは、個々の投資家の選好に由来します。

社会的インパクトに重点を置く投資家がいると仮定した際に、単純に営利を目的にした民間企業(彼らも、雇用を生み、サービスを提供するなど、何らかの社会的インパクトを提供しています)と、社会的課題の解決を目的(意図)とした企業や団体のどちらが、社会的インパクトを生み出しているのかという、エビデンスが絶対的に不足しているように感じます。

実際に、日本のESG投資の市場規模についても、金融市場全体に占める割合は非常に限定的です。

様々な要因が考えられますが、需要と供給という最も単純なスキームで商品企画(提供)サイドから見ると、売れない(需要が乏しい)からということになります。

なぜ売れないのか、これは、そもそも社会的インパクトに重点を置く投資家が限定的なのかという母数の問題もありますが、社会的インパクトに重点を置く投資家であっても、社会的インパクトを意図した投資が実際に、インパクトを生むのかというのは非常に重要なテーマです。

『When Can Impact Investing Create Real Impact?』の記事の中で、

「投資家の意図が何であれ、根本的な問題は、投資が実際に社会的影響を与えるかどうかということ」

(Whatever an investor’s intention, the fundamental question is whether an investment actually has social impact.)とし、

「投資が譲許的※であるというが、それが純粋な社会的なプラスの影響をもたらすという保証ではない」

(the fact that an investment is concessionary is no guarantee that it will create net positive social impact)としながらも、

※【譲許的投資(concessionary investments)】社会的利益を達成するために、より大きなリスクを払うか、より低い収益を受け入れることによって財務的利益を犠牲にする投資

「意図することで、人々は求める結果を達成する可能性が高い」

(In business, as in philanthropy and all other spheres of life, people are more likely to achieve results that they intentionally seek.)と意図の重要性を指摘しています。

その他、様々な観点が紹介されていますので、社会的インパクト投資や評価、ESG投資に関わる方は是非、原文にあったってみてください。

以下記事の内容の抜粋です。

社会的インパクト投資は実際に、社会的・環境的目標達成に貢献するのか?

・NPOや慈善活動や政府援助ではなく、民間企業が社会的・環境的課題の解決に貢献することができるという認識が高まっています。

・インパクト投資分野の成長には、インパクトをどのように評価するかについてや、社会的投資が市場としての収益を実現することができるのかという疑問がつきものです。

→40億ドルとも言われるインパクト投資市場の大半は、市場レートのリターンを生む投資を伴うという研究が紹介されています。

・インパクトには3つの基本的なパラメータがあります。

それは企業インパクト(enterprise impact)、投資インパクト(investment impact)、非金銭的インパクト(nonmonetary impact)です。

・企業のインパクトは、被投資企業が提供する商品やサービスが生み出す社会的価値です。

・投資のインパクトは、企業が創出する社会的価値に対する特定の投資家の金銭的な貢献です。

・非金銭的なインパクトは、創出される社会的価値のうち、金銭的ではないインパクトです。

・インパクト投資家は、社会的企業への投資のためというよりは有益な社会的アウトカムを生み出すことを目指しています。国際開発と炭素市場では、これを追加性(additionality)と呼びます。

・インパクト投資には、社会的利益を達成するために、より大きなリスクを払うか、より低い収益を受け入れることによって財務的利益を犠牲にする、金銭的リターンに対する譲許的投資(concessionary investments)、リスク調整後の市場収益以上を期待するという金銭的リターンに対する非譲許的投資(non-concessionary investments)が含まれます。

・投資家の意図が何であれ、根本的な問題は、投資が実際に社会的影響を与えるかどうかということです。

→例えば、社会的に中立的な投資家は、利益だけで動機づけられているが、先進国と発展途上国の両方における通信会社の社会的影響に貢献してきた。

→意図せずに社会的インパクトを達成することはできますが、これは意図が重要でないことを意味するものではありません。ビジネスでは、慈善活動や他のすべての生活圏のように、人々は意図的に求める結果を達成する可能性が高いからです。

・企業の影響の評価の根底にある理論的枠組みは、OutputsとOutcomesを区別します。

→マラリア対策蚊帳の提供会社を想定した場合、アウトプットは、企業によって生産される製品またはサービスです。 Outcomesは、人々の生活改善における成果の影響です。

・インパクト投資家は、2つの質問に答える必要があります。

 ・意図されたアウトプットがどの程度発生するか?

 →蚊帳セットが製造・配布されたか

 ・アウトプットは意図されたアウトカムにどの程度まで貢献するのだろうか?

 →蚊帳が実際にマラリアを減少させたか(ワクチン接種や蚊撲滅プログラムなどは排除して測定する必要があります)

・投資が譲許的であるというが、それが純粋な社会的なプラスの影響をもたらすという保証ではない。

→マイクロファイナンスとコミュニティ開発機関の補助金などは、様々なプラスの側面もありますが、同時に有害な側面もしられています。

・インパクト投資家が財政的犠牲(社会的利益を得るために財政的利益を犠牲にする投資)を払うつもりがなければ、市場において何か貢献でできることはないのか?

→公開市場で取引されている大型株市場では、影響は非常に限定的。

・ほとんどのエコノミストが、社会的に動機づけられた投資家が株式を購入することによって上場企業の有益なアウトプットを創出することはないということに同意しています。

・インパクト投資は、一般の投資家が投資を行う大口の公開市場ではなく、非完全市場と言われる分野で行われるのが一般的です。(domains subject to market frictions)

→情報の不完全性(広範な投資家は、特に途上国の企業や先進国の低所得地域の特定の機会について、そのリスクと期待収益に関する信頼できる情報だけでは知りません)

→小規模なサイズ。(典型的なインパクト投資は、同様のプライベート・エクイティ投資やベンチャー・キャピタル投資よりも規模が小さいことが多いです)

→限られた退出戦略。(多くの発展途上国では、投資家が合理的な期間内に投資を終了するための信頼性の高いオプションを提供するための市場が十分に開発されていません。)

→ガバナンスの問題。(開発途上国にはガバナンスや法制度が不十分なため、財産権、契約強制、賄賂に関する不確実性が生じる可能性があります。)

等々

・資本提供だけではなく、様々なプレイヤーが社会的インパクト分野に影響を及ぼすことができます。

→ ボルダー研究所は、MFIのスコアリングと評価モデルを開発し、ベンチマーキングを確立し、オープンソース管理情報システムを導入し、数千人のMFI実務家を訓練しました。

・インパクト投資の仲介業者は、投資機会を発見し投資家の注目を集めるために非常に重要であり、前述の情報の不完全性を克服するのに役立ちます。

→Agora Partnershipは、マイクロファイナンスにとっては規模が大きすぎ、伝統的な資金調達には規模が小さすぎる、いわゆる、ミッシングミドル向けに焦点を当てた、中米地域のコミュニティにおける初期段階のインパクト投資を行っています。

→Imprint Capital Advisorsは財団等がインパクト投資の国内外の機会を特定するのを支援しまています。

→ルート・キャピタルのファイナンシャル・アドバイザリー・サービスは、アフリカや中南米における成長性の高い社会企業のビジネスプロセスを強化するように設計されています。ビジネスおよび管理管理、財務計画、リスク管理、会​​計、およびローン申請に重点を置いたトレーニングサービスを提供しています。

・インパクト投資家は、企業の社会的使命を確保し保護する必要があります。(ミッションドリフトを予防する)

→時間の経過とともに、企業の経営陣および取締役は、社会的影響を犠牲にして財務的収益を上げる機会を発見する可能性があります。

→特に、企業が規模を拡大し、社会的に中立的な新しい投資家を雇っていく中で、その危険性は特に深刻化する傾向にあります。

→ミッション・ドリフトを予防する契約上の取り決めや、Bコーポレーションのような法人形態も有効です。

・2010年の調査では、慈善事業者とインパクト投資家が、インパクトに関する情報を得るために大多数が努力を怠っていることを示唆する内容が発表されています。

・投資効果を判断するために、追加性(additionality)や、社会的インパクトは測定が難しいことが知られており、評価を厳密にするとコストがかかり、金銭的リターンや本来行えた社会的インパクトが限定されてしまうというこれまであまり知られていなかった課題です。

・インパクト投資が市場の中心になるためには、市場リターンを犠牲にすることを覚悟している投資家に対しても、期待される社会的価値に対してどのくらいの譲歩をする価値があるのかをしっかりと認識をあわせる必要があります。

今回は、スタンフォードソーシャルイノベーションレビューの『When Can Impact Investing Create Real Impact?』という記事を紹介しました。

引き続き、社会的インパクトに関連する企業やその取組みについて紹介していきます。

〜関連書籍〜


フィランソロピーのニューフロンティア:社会的インパクト投資の新たな手法と課題

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