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取締役会の実効性評価|CGコード4-11③と外部評価の使い分け

コーポレートガバナンスコード補充原則4-11③が求める取締役会の実効性評価は、自己評価から外部評価への移行、社外取締役の機能性、サステナビリティー領域の評価、結果開示の透明化が論点に。担当者向けに実効性ある評価設計を取り上げる。

取締役会の実効性評価|CGコード4-11③と外部
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コーポレートガバナンスコード補充原則4-11③は、上場企業に対して、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示することを求めています。プライム市場・スタンダード市場の上場企業の多くで、年1回の取締役会実効性評価が定着してきました。

ところが、評価の質には、企業によって大きな差があります。

取締役会事務局の方から伺う話は、驚くほど似通っています。毎年同じアンケート項目で自己評価を回しているが、形骸化している感覚がある。社外取締役が出した問題提起が、翌年の運営に反映されていない。サステナビリティー領域の論点は、そもそも自己評価フォーマットで拾えていない。

そして最後に、こう続きます。外部評価も検討したいが、コストと選定の軸が分からない。評価結果を開示はしているが、機関投資家との対話材料としては使えていない、と。

ここでは、(1)CGコード補充原則4-11③の要請の本質、(2)自己評価と外部評価の使い分け、(3)評価項目の設計、(4)結果開示の精度、(5)サステナビリティー領域の評価、という流れで挙げます。

CGコード補充原則4-11③の本質

補充原則4-11③は、

「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。」

と定めています。

この一文に含まれる戦略上の重要なポイントは、対象が個別取締役評価ではなく「取締役会全体の実効性」であること、評価のみでなく「分析・評価」を行うこと、社外公表を前提に「結果の概要を開示する」こと、そして「毎年」継続的に運営することの4点です。

「自己評価アンケートをやって結果を一行書く」という対応は、補充原則の要請には不十分です。取締役会全体の機能性を、構造的に分析・評価し、改善計画を立て、進捗を継続管理する、という運用OSとしての設計が、本来の要請です。

自己評価と外部評価:使い分け

取締役会の実効性評価には、自己評価と外部評価の二つのアプローチがあります。

自己評価は、取締役・監査役・社外取締役自身がアンケート・インタビューに回答し、取締役会事務局・経営企画・コーポレートガバナンス担当が運営するもので、コストが低く年次運営が容易な反面、内部視点に閉じ深掘りに限界があります。外部評価は、評価会社・コンサルファーム・弁護士事務所・独立コンサルタントといった独立した第三者が、取締役・監査役へのインタビュー、議事録分析、議事運営観察を行うもので、客観性が高く深掘りが可能な一方、コストが高く(数百万〜数千万円)、3〜5年に一度の頻度が現実的です。

国内外の主要なベストプラクティスでは、年次は自己評価、3〜5年に一度は外部評価とし、両者の組み合わせで継続性と客観性を両立する設計が、増えてきています。

主要な外部評価提供者には、次のものがあります。

  • SpencerStuart、Egon Zehnder、Russell Reynolds Associates等の役員サーチファーム系
  • PwC、EY、Deloitte、KPMGのガバナンス部門
  • PRONED、ICGN、ISS Corporate Solutions等のガバナンス専門
  • 国内:日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(JCGN)、IRジャパン、ジャパンファイナンスコンサルティング等

担当者の方は、外部評価を導入する場合、複数の提供者からの提案を比較し、自社の取締役会の課題・関心事項に合った選定をおすすめします。

評価項目の設計:「型」を超える

実効性評価の項目設計は、業界共通の「型」がある一方で、自社の取締役会の課題に応じたカスタマイズが、評価の質を左右します。標準的な評価項目は、次のとおりです。

  • 取締役会の構成(多様性、独立性、専門性)
  • 運営(議題、議事資料、議論時間、議事進行)
  • 議論の質(討議の活発さ、社外取締役の貢献、戦略議論の深さ)
  • 経営監督機能(経営戦略、リスク管理、後継者計画)
  • 委員会の機能性(指名、報酬、監査、サステナビリティー)
  • 情報開示・株主との対話
  • 取締役のオンボーディング・トレーニング

これに加えて、サステナビリティー・ESG領域の議論(次節で詳述)、M&A・事業ポートフォリオ転換期の経営監督、地政学・サイバーセキュリティ・AIといった特定リスクへの対応、子会社・関連会社のグループガバナンス、株主との対話の質といった自社特有の論点を組み込むことで、評価の解像度が上がります。

あるプライム上場企業のご支援では、評価項目の一部を自社の中期戦略課題に応じてカスタマイズする設計に切り替え、評価結果が経営戦略議論に直接接続される動線を作りました。

サステナビリティー領域の評価

近年、取締役会の実効性評価で重みが増しているのが、サステナビリティー・ESG領域の議論の質です。

評価ポイントとしては、サステナビリティー戦略・マテリアリティへの取締役会の関与、気候・自然・人権・人的資本の各領域での議論時間と深さ、サステナビリティー委員会と取締役会の連携(弊社過去記事「サステナビリティ委員会の実効性は『5つの問い』で見抜ける」参照)、SBTi・TNFD・SBTN等の認定取得・進捗の取締役会レビュー、スキルマトリックスと整合した取締役のサステナビリティー専門性・知見(弊社過去記事「取締役会のサステナビリティー・スキルマトリックス」参照)、気候訴訟・人権侵害リスクの監督(弊社過去記事「気候訴訟リスクとガバナンス」参照)、統合報告書・有報の経営層レビューの実態が挙げられます。

これら論点が、汎用評価項目に組み込まれていない企業が、まだ多いのが実情です。担当者の方は、サステナビリティー領域の評価項目を、明示的に組み込む設計をおすすめします。

結果開示の精度:「概要」の意味

CGコード補充原則4-11③は「結果の概要を開示」と求めています。「概要」の解釈は企業によって幅がありますが、最低限の開示は、評価の実施方法(自己評価・外部評価の有無、対象者)、主要な評価項目、主要な気づき・課題、改善計画の概要です。機関投資家評価が高い開示は、これに加えて、前年の課題に対する取り組み実績、本年新たに浮上した課題、誰がいつまでに何をするかという具体的な改善アクション、議長・委員会・議題・頻度等の取締役会の構成・運営の変更、サステナビリティー領域の評価と取り組み、3〜5年の継続的な改善トレンドを示します。

機関投資家との対話で、実効性評価結果が議題に上がることが増えています。表面的な「概要」開示で済ませると、対話の質が下がる、という構造的な圧力があります。

評価結果の経営判断への接続

実効性評価で最も避けたいパターンは、評価結果が経営判断・取締役会運営に反映されないことです。

形骸化のパターンは、毎年の評価項目も課題も同じで対応が曖昧、評価結果が改善アクションに繋がらない、社外取締役からの問題提起が議題化されない、取締役会の運営(議題・議事時間・議論深さ)が変わらない、統合報告書での開示が前年とほぼ同じ文章、といった状態で、評価が「評価のための評価」になってしまっています。

実効性ある運用では、評価結果を年次の取締役会で議論し、誰がいつまでに何をするかの改善計画を文書化し、四半期の進捗レビューを取締役会で実施し、翌年の評価で進捗を確認し、3〜5年の継続的な改善トレンドを蓄積します。

CGコード2026改訂との接続

弊社過去記事「コーポレートガバナンスコード2026改訂」でも触れましたが、2026年4月に公表されたCGコード改訂案では、取締役会事務局の機能強化など、取締役会の実効性に関わる論点も扱われています(金融庁)。

予想される方向性は、サステナビリティー領域の評価の明示化、外部評価の活用推奨の強化、結果開示の精緻化、取締役会の機能性指標の標準化です。

担当者の方は、CGコード再改訂の動向をウォッチしつつ、実効性評価の設計を、改訂を見越して整備することをおすすめします。

グローバルベストプラクティス:UK Corporate Governance Code、ICGN

国際的なベストプラクティスを参照しておくと、自社の評価設計の質が上がります。

**UK Corporate Governance Code(FRC)**は、実効性評価の毎年実施(自己評価)と3年に一度の外部評価を推奨し、外部評価提供者の独立性要件や、評価結果と取締役会運営の変更を明示する開示を求めます。ICGN Global Governance Principlesは、取締役会の構成・独立性・機能性の標準や実効性評価のベストプラクティスを、国境横断の機関投資家視点で示します。OECD Principles of Corporate Governanceは、各国規制の参照モデルとなっています。

これらを参考に、自社の実効性評価を、グローバルな視点で組み立て直すことをおすすめします。

「形だけ実効性評価」を超える

最後に、実効性評価で、避けたいパターンを一つ。

実効性評価を「コードに書いてあるからやる」「結果開示の文章を毎年書き換えるだけ」という運用では、取締役会の機能性は何も変わりません。

担当者の方には、

  • 毎年の自己評価+3〜5年に一度の外部評価の組み合わせ設計
  • 自社の中期戦略課題に応じた評価項目のカスタマイズ
  • サステナビリティー領域の評価項目の明示的組み込み
  • 結果の経営判断・取締役会運営への接続
  • 改善計画の文書化と進捗管理
  • 統合報告書での具体的・継続的な開示
  • CGコード再改訂を見越した運用整備

このあたりを、年次の運用に組み込むことをおすすめします。

形だけ実効性評価を済ますか、取締役会の機能性を本気で高める道具として使うか。担当者の方の意識付けで、ガバナンスの質は確実に変わります。


【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)では、取締役会実効性評価の設計、外部評価提供者の選定、サステナビリティー領域の評価項目設計、結果開示の高度化の伴走支援を実施しています(専門家プラットフォームSasla経由のご相談も可)。実効性評価の運用整備でお悩みの方は、論点の棚卸しからご一緒します。

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KI Strategy 編集部所属。ESG・サステナビリティを軸に、開示と意思決定を貫くロジックを編む。

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