ESG・サステナビリティー担当者のキャリアを、3年・5年・10年単位で必要なスキル変化と、専門領域の選び方、社内昇進/専門家化/転職の三選択肢で整理。Sasla(弊社運営の専門家プラットフォーム)、CLO Career連携も含めた、長期キャリア設計の考え方の実務観点を扱う。
ESG・サステナビリティーの担当者個人の方から、ご相談を頂く機会が、ここ数年で急増しました。
業務上のご相談だけでなく、サステナビリティー部門に異動してきたが3〜5年後にどんなスキルを持っていれば評価されるのか、気候・人権・人的資本・ガバナンスのうちどの専門領域に軸を置くべきか、社内昇進と専門家としてのキャリアのどちらに進むべきか、社外(コンサル、専門家プラットフォーム、他社)への転身を考えているが何を準備すべきか、といったキャリア論の相談を、頂くようになっています。
サステナビリティー領域は、市場として急速に立ち上がってきており、5年前と比較しても求められるスキルセットが大きく変化しました。担当者の方が個人として何を磨くべきかを考える機会が、増えていると感じます。
担当者になってからの年数で、求められるスキルセットは段階的に変化していきます。
3年目までに身につけるべきこと
これらは、担当者として「業務を回せる」最低条件です。
5年目までに身につけるべきこと
10年目までに身につけるべきこと
3年・5年・10年は目安に過ぎませんが、それぞれの段階で身につけるべきスキルが違うことを意識しておくと、日々の業務の中で、何を学ぶか・何を経験するかの優先順位がつけやすくなります。
サステナビリティー領域は、すべてを網羅的にカバーするには広すぎます。担当者の方には、自分なりの専門領域を、5〜7年目までに1〜2つに絞ることをおすすめしています。主要な専門領域を、いくつか挙げます。
専門領域の選び方は、自社のマテリアリティ、自分の関心、業界の需要動向の三つの交差点で決まります。「自社では今これが求められている」「自分が深めたい」「業界全体で需要が伸びている」が重なる領域を選ぶと、その後のキャリアの幅が広がります。
5〜10年目の担当者の方が、よく直面する選択肢が、以下の三つです。
社内昇進ルート
サステナビリティー部門の中で部長・役員レベルへ昇進、または経営企画・IR・人事などへの異動を経て経営幹部を目指す道。自社の事業・文化への深い理解が活かせる一方、社内のサステナビリティー部門の規模・地位に左右されます。
専門家化ルート
特定の領域(たとえば気候DD、人権DD、TNFD対応)の専門家として、社内外で認知される道。コンサルティングファーム、評価機関、検証機関、専門家プラットフォームなどで、複数のクライアントに専門知見を提供する働き方になります。本業の傍らで、自社の副業規程の範囲内で、副業・複業を通じて他社の事例を学ぶ、という「半専門家化」の進み方も、近年は急速に普及しています。
転職ルート
他の事業会社、コンサルティングファーム、ESG投資機関、規制当局、NGO、国際機関などへ転職する道。業界・地域・役割の選択肢が広く、キャリアの幅を大きく変えられる一方、新しい環境への適応が必要です。
これらは排他的な選択ではなく、5〜10年単位で組み合わせていく「キャリアの設計」として捉えるのが、長期的に効きます。「一つの会社で一生」というキャリアモデルは、サステナビリティー領域では既に少数派です。形だけのジョブローテーションで部署を渡り歩くのではなく、複数の経験を意図的に組み合わせて自分のキャリアを設計する、という発想が、これからのスタンダードになっていきます。
サステナビリティー領域でキャリアを重ねた人の軌跡を、典型的なパターンとして描いてみます。たとえば、新卒入社した製造業の経営企画部でサステナビリティー業務を兼務し、1〜3年目にScope1+2+3算定・CDP対応・TCFD開示の基礎を経験。4〜6年目に気候領域へ絞って深掘りし、SBTi認定取得プロジェクトを主導、機関投資家との対話も担当。7年目にコンサルティングファームへ転職し、複数業種のクライアント支援を通じて業種横断の視座を得る。10年目に別の事業会社へCSO候補として転職し、気候専門家としての実績と経営企画出身の事業理解を組み合わせて議論を主導――という軌跡です。
この軌跡では、社内昇進ルートから専門家化ルート、そして転職ルートへと組み合わさっています。各段階で身につけた経験が、次のステージで複利のように効いている、という構造が見えます。
最後に、サステナビリティー担当者として、長期のキャリアを考える上で重要なのが、「自分が担当者として、自社・社会に何を残すか」という視点です。
サステナビリティー領域は、長距離走です。一つの企業の脱炭素、人的資本、人権、自然関連の取り組みは、5年・10年・20年と続きます。担当者個人が、そのうちの数年を担う形になります。
自分の在任期間中に、自社のサステナビリティー戦略をどこから・どこまで進めたか、組織としてサステナビリティーが本業に組み込まれた仕組みを残せたか、後継者が自分の積み上げた基盤の上にさらに進めていける状態を作れたか――これらを意識して日々の業務に取り組むかどうかで、担当者としての10年の重みが変わってきます。
担当者個人のキャリアと、組織のサステナビリティー推進は、表裏一体です。自分のキャリアを長期視点で設計することが、結果的に、自社・社会のサステナビリティーを前に進める原動力になります。
【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)が運営する専門家プラットフォームSasla(サスラ)、CLO Careerでは、サステナビリティー領域の中途・キャリア採用、転職、副業・複業のご相談を伺っています。キャリア設計や次のキャリアステップで悩まれている方は、お気軽にご相談ください。
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