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Greenhushingをどう判断するか|SIA

EcoVadis 2025調査で米国企業の87%がESG投資維持/増加。一方で約3分の1がコミュニケーションを意図的に減らすGreenhushingが進行中。S&P100のESG表記は40%→25%へ。発信を控える戦略と控えてはいけない情報の判断基準を、上場企業の事例と共に扱う。

GREENHUSHINGをどう判断するか|SIA
FIG. 01 / GREENHUSHINGをどう判断するか|SIAPHOTOGRAPHY / ARCHIVE

ここ1〜2年で、海外を中心に、Greenhushing(グリーンハッシング、サステナビリティー発信を意図的に控える戦略のことです)という言葉が広がっています。

EcoVadisの2025年調査では、米国企業の87%がESG投資を維持または増加させている一方で、約3分の1(投資を増やしつつ発信を控える31%と、公表自体をやめた8%)が意図的にコミュニケーションを減らしている、と報告されています(EcoVadis)。The Conference Boardの調査でも、S&P500企業のうち気候関連目標を開示している企業の割合は87%と高水準である一方、S&P100企業で報告書のタイトルに「ESG」という言葉を使った企業は40%(2023年)から25%(2024年)へ低下し、2025年は約6%にとどまっています(The Conference Board)。

ご支援先の上場企業でも、米国市場の取引先に配慮して英文サステナビリティー・レポートから「ESG」の語を減らした、統合報告書のタイトルや章構成を見直して抽象的な単語をビジネス用語に置き換えた、サステナビリティー宣言を出すかどうかで社内の議論が続いている——こうした動きが相談の場で目につくようになっています。

なぜ、企業は「黙る」選択をするのか

Greenhushingの背景には、複数の要因が重なっています。

米国でのトランプ政権下での反ESGの政治的圧力、SECの気候開示ルールの事実上停止(2025年3月SECが法廷防御を取り下げ)、欧州でのCSRD/CSDDDの適用範囲縮小(Omnibus I、2025年12月trilogue合意・2026年2月理事会承認、Stop the Clock指令で適用時期1年延期)、Green Claims Directiveの撤回意向(2025年6月)、機関投資家側からのESG投資判断のトーンダウン、CA100+からの一部運用機関の離脱、競合他社や規制当局からのグリーンウォッシュ訴訟リスク――これらが同時並行で進んでいるためです。

The Conference Boardの2025年調査では、米国・多国籍の大企業の80%がESG戦略の見直しを進めており、90%の経営層が「ESGに対する反発が今後2年で継続または拡大する」と予測しています(2023年の61%から大きく上昇。The Conference Board)。

つまり、Greenhushingは、企業がESG活動から撤退しているのではなく、活動は維持しつつ「語り方」だけを変えている現象です。HBRが2025年に公表した75社調査でも、サステナビリティーから後退したのは13%にとどまり、85%は維持・加速している、と報告されています(Harvard Business Review)。

「黙る」と「黙らない」を分ける四つの基準

担当者の方が、自社の発信戦略を見直す際に、参考にしていただける基準をいくつか挙げます。

第一に、対象ステークホルダー別の発信戦略。投資家・規制当局には、開示要請に基づく義務開示は引き続き必要です。一方で、消費者向け広告・マーケティングや、政治的に敏感な地域の取引先向けコミュニケーションでは、トーンダウンの選択肢が出てきます。

第二に、開示と発信の役割分担。法令・基準で義務付けられた開示(SSBJ、女性活躍推進法、CGコード対応など)は、Greenhushingの対象外です。一方で、任意の発信(プレスリリース、SNS、社外広報)では、メッセージ設計を見直す余地があります。

第三に、コンテンツの「具体性」。「我が社はサステナブルです」のような抽象的なメッセージは、グリーンウォッシュ訴訟のリスクを高めます。一方で、「2025年にScope1+2排出量を前年比12%削減した」という具体的な事実ベースの発信は、リスクが相対的に低くなります。

第四に、「沈黙のコスト」の認識。発信を控えると、従業員のエンゲージメント、取引先からの信頼、優秀な人材の採用、ESG投資家からの評価などに影響が出ます。これらの長期的なコストを軽視して短期の政治リスクだけを見ると、戦略を誤りやすくなります。

「形だけ控える」の落とし穴

ご支援先で見かける、もったいないGreenhushingのパターンも挙げておきます。

  • 「ESG」「サステナビリティー」という言葉だけを言い換え、中身は変えていない(投資家にすぐ見抜かれます)
  • 米国向けと欧州・日本向けで、開示内容そのものを変えてしまう(一貫性のない開示は信頼を毀損します)
  • 「Greenhushingが流行りだから、うちもやる」と、戦略議論なしに発信を絞る
  • サステナビリティー部門と広報・IRの連携が切れたまま、それぞれが独自に発信を控える

Greenhushingは、「黙る/語る」の二択ではなく、ステークホルダー別、開示種別、コンテンツの具体性、長期コストといった複数の軸で、自社の発信戦略をデザインし直す機会、と捉えるのが本来の姿です。

「自社の言葉」で語り直す機会として

ある上場製造業のご支援では、統合報告書の構成を大きく見直しました。

「ESG」「サステナビリティー」という章立てを廃止し、代わりに「事業継続戦略」「人材戦略」「気候レジリエンス」「サプライチェーン強靭化」といった、ビジネス用語に翻訳された章立てに変更したのです。

開示している中身(Scope1+2+3、女性管理職比率、人権DD、TCFDシナリオなど)は、むしろ詳細化しています。語り口だけを「ESGの言葉」から「経営の言葉」に翻訳し直した形です。

Greenhushingが「自社の活動を覆い隠す」方向ではなく、「自社の言葉で語り直す」方向に向かう設計ができれば、政治的逆風があっても、長期的な企業価値向上につなげる発信が可能になります。

担当者の方が、自社のサステナビリティー発信を見直すきっかけになれば幸いです。


【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)では、サステナビリティー戦略コミュニケーションの伴走支援を実施しています(専門家プラットフォームSasla経由のご相談も可)。Greenhushingへの対応に悩まれている方は、お話を聞かせていただければと思います。

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