IFVI(International Foundation for Valuing Impacts、Harvard IWAIの活動を継承)とVBA(Value Balancing Alliance)が、企業の社会・環境影響の貨幣換算アカウンティング基準を整備。SROIから「インパクト・アカウンティング」への進化を担当者向けに取り扱う。
「自社の事業活動が、社会・環境にどれだけのプラス(またはマイナス)の影響を生み出しているか」を、金額で換算して開示する――この潮流(インパクト測定/価値の見える化)が、ここ数年で大きく前進しました。
代表的なフレームワークが、IFVI(International Foundation for Valuing Impacts、インパクト価値化国際財団)と、VBA(Value Balancing Alliance、バリュー・バランシング・アライアンス)です。両者は連携しており、企業の社会・環境影響を貨幣単位で測定するためのアカウンティング基準を整備しています。
最も多いのは、語りたいのに測るものが決まらない、という相談です。統合報告書で「インパクト経営」を打ち出したい。ただ、何を測ればそれが語れるのかが分からない。
すでに取り組んできた企業からは、別の問いが来ます。SROIや独自の社会的価値算定を続けてきたが、標準化された方法論に乗り換えるべきか。IFVIやVBAのアカウンティング基準を、自社の事業にどう当てはめ始めるか。そして共通して聞かれるのが、機関投資家や規制当局は結局どこまで求めてくるのか、という見通しの話です。
過去、SIAでも「SROI(Social Return on Investment、社会的投資収益率)」をテーマに連載をしてきました。SROIは、特定のプロジェクト・事業の社会的インパクトを、貨幣換算で評価する手法として、今も広く使われています。
ただ、企業全体・事業ポートフォリオ全体のインパクトを、財務会計と整合する形で測定する、という発想で発展してきたのが、IFVI/VBAなどの「インパクト・アカウンティング」アプローチです。
簡単に整理すると、
両者は対立するものではなく、用途と粒度の違いで使い分ける関係にあります。
IFVI(International Foundation for Valuing Impacts)は、Harvard Business School のImpact-Weighted Accounts Initiative(IWAI、2019年George Serafeim氏らが立ち上げ)の活動を継承する形で、2022年に独立した国際組織として設立されました(IFVI)。
VBA(Value Balancing Alliance)は、2019年にBASF、SAP、Boschなど欧州大手企業を中心に立ち上がったコンソーシアムで、貨幣換算インパクト測定の方法論を実装してきました。
両者は2024年に協働関係を強化し、IFVIが基準設定(Topic-specific Standards)を、VBAが企業実装を担う、という役割分担で連携しています。
IFVIのトピック別基準(Topic-specific Standards)は、General Methodology(v1.0、2024年公表)を土台に、温室効果ガス排出、大気汚染、水使用、人材育成・訓練、ジェンダー平等、雇用、製品の安全性、賃金などのテーマで段階的に策定が進められています。先行公表されているのはGHG排出と大気汚染の2分野で、次にWaterと人的資本系のテーマが続く見通しです。
インパクト測定で貨幣換算を行う最大の意義は、
といった点にあります。
一方で、貨幣換算には限界もあります。
担当者の方には、貨幣換算インパクトを「絶対値」ではなく、「比較・経年トレンド・トレードオフの議論材料」として活用されることを、おすすめしています。
EUのCSRD/ESRSが採用するダブルマテリアリティ(影響マテリアリティ+財務マテリアリティ)の「影響マテリアリティ」側は、IFVI/VBAのインパクト・アカウンティングと、概念的に親和性が高い領域です。
ダブルマテリアリティの議論で「自社の事業活動が、人・社会・環境に与える影響」を整理する際、IFVI/VBAのトピック別基準が、定量化の道具として活用できます。
ある上場消費財メーカーのご支援では、ESRSダブルマテリアリティ評価を進める中で、影響マテリアリティ側の主要論点(CO2、水、人材育成、サプライチェーン労働環境)について、IFVIの基準を参考に貨幣換算インパクトを試算しました。試算自体に確定値の意味はありませんが、経営層・取締役会が影響マテリアリティの相対的な大きさを直感的に掴めるようになり、議論の質が変わります。
インパクト測定を、機関投資家・規制当局がどこまで求めるかは、現時点では発展途上です。
機関投資家側でも、インパクト測定への期待は高まっていますが、貨幣換算の方法論の不確実性から、議決権行使や投資判断の決定的な指標として使うには、まだ時間がかかる、という見方が一般的です。
担当者の方には、「機関投資家から強く求められるから対応する」という姿勢ではなく、「自社の事業の社会的価値を、自社の言葉で語り直す機会」として、インパクト測定に取り組まれることを、おすすめします。
最後に、インパクト測定を形だけにしないための視点を、いくつか挙げておきます。
「インパクト経営」「社会的価値創出」というスローガンを統合報告書に並べるのではなく、具体的な数値・方法論・検証可能性を伴った形で、自社の社会的価値を語り直すこと。これが、形だけインパクト評価を超える、本質的な実装です。
【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)では、IFVI/VBAなどインパクト測定フレームワークの実装と、ESRSダブルマテリアリティとの連動の伴走支援を実施しています(専門家プラットフォームSasla経由のご相談も可)。インパクト経営を統合報告書でどう語るかでお悩みの方は、現状の診断からお手伝いできます。
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