SBTN(Science Based Targets Network)はSBTiの姉妹組織として、自然(淡水・土地・海洋・生物多様性)の科学に基づく目標設定を担います。2026年Global Biodiversity Stocktakeに向けて150社超が準備中。TNFDのLEAPアプローチとの接続を扱う。
気候変動の領域でSBTi(Science Based Targets initiative)が事実上の標準になっているように、自然関連の領域でもSBTN(Science Based Targets Network)が、目標設定の標準的フレームワークとして広がっています。
2026年は、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の進捗を世界的に総点検する、初のGlobal Biodiversity Stocktakeの年です(SBTN)。SBTNは、Global Commons Allianceの一機能であるAccountability Acceleratorによる検証サービスを2025年2月20日に開始し(Accountability Accelerator)、150社超のグローバル企業が、自然関連目標の設定に向けて準備を進めています。
ご支援先からも、TNFD対応は始めたがSBTNの目標設定まで進むべきか、自社が自然関連目標を立てるべきかどうかの判断軸が分からない、気候の目標(SBTi)と自然の目標(SBTN)をどう棲み分けるのか——こうした相談を頂くようになっています。
SBTiは温室効果ガス削減(気候変動)に焦点を当てた、企業の目標設定の枠組みです。Scope1+2+3の削減を、科学的根拠(1.5℃シナリオ、Net-Zero)に整合させる目標を認定します。
一方、SBTNは自然全般(淡水、土地、海洋、生物多様性)に焦点を当てた、企業の目標設定の枠組みです。SBTiの姉妹組織として位置づけられており、気候と自然の両方の目標を、それぞれ科学的根拠に整合させていく構造です。
つまり、
という棲み分けです。
担当者の方によく頂く質問が「SBTiとSBTNを両方やるべきか」というものですが、自社のマテリアリティに照らして自然依存度・影響度が高い業種(食品、農業、繊維、化学、小売、林業、漁業など)では、SBTNへの目標設定が、機関投資家・顧客企業からの期待事項に近づいていくと予想されます。
SBTNは段階的に目標設定領域を拡大していく計画で、最初のリリース(2023年5月)では、淡水(Freshwater)と土地(Land)の二領域からスタートしました(World Economic Forum)。
具体的には、
について、企業がScience Based Targetsを設定できる方法論が整備されました。
海洋(Ocean)と生物多様性(Biodiversity)については、方法論が順次整備されていく見込みです。担当者の方は、自社のマテリアリティに照らして、淡水・土地のどちらか(または両方)が重要論点になるかを、まず見極めることが出発点になります。
SBTNでは、目標設定を5つのステップで進める方法論を提示しています。
これは、TNFDのLEAPアプローチ(Locate、Evaluate、Assess、Prepare)と概ね対応する構造で、TNFD対応を進めてきた企業はSBTNへの移行がスムーズになります。
ある化学品メーカーのご支援では、TNFDのLEAPで自然依存・影響をマッピングした成果物を、ほぼそのままSBTNのステップ1〜2に流用でき、目標設定までの時間を縮められました。
SBTNの目標は、Accountability Acceleratorと呼ばれる検証プロセスを通じて公式認定されます。これは2025年2月20日に正式に開始されたサービスで、SBTiの認定プロセスと類似した構造です。検証プロセス自体は標準で約9週間を要し、現時点(2026年5月)では淡水・土地ターゲットが検証可能、海洋ターゲットの検証はパイロット運用中です。
検証の主な要素は、
などです。
検証を経て認定された目標は、企業の統合報告書や投資家対話の場で、客観性を担保された形で活用できます。SBTi(気候)の認定マークと同様に、SBTNでも検証済みステータスが、機関投資家・主要顧客企業・規制当局からの信頼性のシグナルとして機能していくことが想定されます。
冒頭でも触れたとおり、2026年のGlobal Biodiversity Stocktakeに向けて、SBTNのStep Up for Natureキャンペーンは民間セクターの動きを可視化する狙いがあります。各国政府の進捗だけでなく、民間セクターの貢献が評価対象になる以上、担当者の方には、
ことをおすすめしています。
なぜ今、自然関連まで戦略を広げるべきなのか。気候変動への対応だけでは、自社のリスクの半分しか見えていない、という構造的な理由があります。原材料調達、水利用、土地利用、サプライチェーン上の生態系依存――これらは、気候変動の試算では現れにくい論点で、別軸での評価が必要です。
これまで多くの日本企業のサステナビリティー戦略は、気候変動・脱炭素を中心に設計されてきました。
ただ、機関投資家・規制当局・顧客企業からの期待は、確実に「気候+自然」の両輪に拡張されつつあります。TNFDの広がり、SBTNの普及、CSRD/ESRSでの自然関連開示の義務化、SSBJでの今後の論点拡張――いずれも、同じ方向を向いています。
「気候だけ」のサステナビリティー戦略から、「気候+自然」への拡張。SBTNへの目標設定は、この拡張の主要な道具のひとつです。
自然関連を「気候のついで」で形だけ触れるのか、事業戦略の中に正面から組み込むのか。そのスタンスの差が、数年後の戦略の幅を分けます。
【ご相談窓口】 弊社(株式会社KI Strategy)では、SBTN対応とTNFD連動の伴走支援を実施しています(専門家プラットフォームSasla経由のご相談も可)。自然関連目標の設定で悩まれている方は、お気軽にご相談ください。
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