Social Impact Act
2020年12月11日
SIAの今井です。
インパクト評価の連載の第八話です。
サステナビリティーや社会性を帯びた領域の効果をいかに測定し、マネジメントしていくか?
そのエッセンスとなる概念や手法などを色々と紹介してきました。
SIAの読者の方は、関連領域の知見を、少しずつ吸収頂いてるのではないかなと思います。
まだ、今までの回を見られていない方は下記もチェックしてくださいね!
・【第一話】企業の社会的インパクトを如何に測定し公開していくべきか?
・【第二話】社会的インパクト評価と実施するための重要概念
・【第三話】社会的インパクト測定における対象範囲と波及効果の論点は?
・【第四話】社会的インパクトマネジメントとリーンな評価
・【第五話】企業の取り組みの社会性の測定方法~With Without~
・【第六話】社会的インパクト測定における主要な考慮事項
・【第七話】インパクト評価に登場するRCTの意義と注意点
さて、前回は、RCT(ランダム化比較試験)について紹介しました。
実際に、ある程度のエビデンスを持って、社会的インパクトを説明しようとした際に、RCTの考え方は重要になります。
インパクト評価でなくても、例えば、WEBなどの領域でも、いわゆるABテストなどとも言われますが、実際に施策の効果があったかどうかを判定する際に、ランダムで訪れる訪問者について、どちらがコンバージョン率が高いかを、RCTなどの考え方をベースに測定することは普通に取り組まれることです。
いやいや、WEBなどはデータ取りやすくて、社会的インパクト領域と同列には語れないのでは?という疑問を持たれる方も多いかもしれません。
今回は、RCTのリーン性と、SROIについて紹介します。
前回、RCTは有効な測定方法となりうるが、留意点として、
・範囲限界性
・統計学限界性
・非リーン性
を上げました、最初の二つは第七話で紹介しましたので、最後に、非リーン性についてです。
こちらは、【第四話】社会的インパクトマネジメントとリーンな評価でも紹介しましたが、インパクト評価においては、厳密性だけでなく、簡易性(リーン)な形で行うことが重要という話をしました。
当たり前ですよね。測定することに、お金と労力をかけすぎて、実際のアクションがおざなりになっては元も子もありません。
RCTの留意点を上げるとしたならば、そのリーン性かもしれません。
こちらは、その社会的インパクトの領域がどの程度の厳密性を求めるかによって、使う手法も切り分ける必要があるということです。(実際は、RCTにおいても、簡易的にやる方法は模索されていますので、RCT=リーンではないという意図ではないので悪しからず。)
では、RCT以外にどのような手法があるのかを紹介します。
一つ目が、SROI(社会的投資利益率)です。
【概要】
•企業財務の評価手法ROI(投資収益率)や費用便益分析(CBA: cost-benefit analysis)などをベースに、社会的価値の定量化と社会的生産性の向上を目的とした評価手法
•活動のステークホルダーを明確にし、関係者毎のインプット、アウトプット、アウトカムを定義し、それを定量評価する手法
【発祥・展開】
•1990年代に米国REDF(ロバーツ財団)により社会的活動の定量的評価指標として開発され、社会的活動の評価手法の一つとして用いられている
•英国政府にて、行政サービスのアウトソース定量評価を義務付ける「Social Value Bill」など、ビックソサエティ政策の一環としても推進されている
※対象とするアウトカムに対して、下記の方程式で求めることが出来ます
「総便益/総費用」 = SROI
具体的な事例における算出手法については、次回紹介していければと思います。
今回のサマリーは下記となります。
・RCTにおいて、リーン性の観点は要注意(測定の厳密性だけでなく、なんのためにインパクト評価をするのか?)という目的意識を常に持つ必要がある
・社会的インパクト評価には様々な手法があり、その一つにSROIがある
また、インパクト評価以外にも取り上げて欲しいトピックなどあれば、お気軽にその旨ご連絡ください!